脱出
彼女は目を覚まし髪を纏めました
繋いだ手を振り払い唇を噛みしめました
ギュッと目を瞑り残りの日々を数えました
何度も何度も振り返り溢れ出る涙をぬぐいました
痛む身体を起こし少しだけ笑い顔を見せてくれました
僕は知っていました
彼女の「大丈夫」は嘘つきの言葉でした
そこは灰色に押し潰されそうな世界でした
もうたくさんだと声が壊れかけていました
彼女を連れ出そうと決心したのでした
僕が必要になるように決心したのでした
気付けば彼女の悲しみだけを掬えるよう懇願していました
想いの果てはこんな所に隠されていました
だから僕はここまで逃げるふりをしてきました
薄暗く続く奥底へ 二人きりで並ぶためでした
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