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鈴木真理子のファッションレポート&インタビュー ALI PROJECT 宝野アリカ篇【後編】


2022年2月に開催された、ALI PROJECTのライブ
30th ANNIVERSARY TOUR 2022「Belle Époque」。
今回はOtona Alice Walk編集部・鈴木真理子が、ヴォーカル・宝野アリカの衣装について詳しくお届けします♪
宝野アリカインタビューも必見です!
前編に引き続き、
【後編】はライブ後半の衣装についてご紹介。

〈衣装2〉ライブ後半:真っ赤な大正撫子モダンガール

11曲目からは、アリカ様は衣装ごと、19世紀末~20世紀初頭のフランスから、当時の日本にワープ!
「緋ノ月」という曲名にふさわしく、真っ赤なケープに身を包み登場。



そのケープを外すと大きな赤いヘアリボン、着物のような袖がついた紅白のトップに、チュールでふんわり広がるスカートという姿で、まさに和洋折衷ロリータ姿、といったところでしょうか。
この姿で歌う「大正撫子モダンガール」とはこれ以上ないほどのマッチング! 紅白の衣装で踊るドラァグクィーン達がまた舞台を盛り上げます
(こちらの衣装も今まで撮影で使ったものなどをカスタムし、巧みにコーディネイトしています!かなりのファンでもひとつひとつが何であるかを解き明かしていくのは難しかったかもしれません。)

この曲に続く明治~昭和~平成~令和メドレーでステージは、時にジャズ風、時に生ヴァイオリン演奏を効かせて、鹿鳴館の舞踏場か、大正・昭和初期のダンスホールが目に浮かぶかのようです。アリカ様も腕を大きく振りかざし、いつになく激しめの踊りを見せてくれます!
踊る間、振り向き様時々見られる後ろ姿からは、背中の編み上げリボンが……。チュールのオーバースカートを外すと下にはミニ丈のワンピースが!まさに衣装も一緒に舞い踊る楽しさでした。
ドラァグ達も海軍の兵士の手旗信号を思わせるポーズで旗を振り、ここにはまさに古のフランスから打ってかわって……第二次大戦以前の日本がありました!

ラストにはアリカ様もアリプロの旗を持って、「日出づる万國博覧会」で華々しく、舞台を後にすることとなりました。

前半と後半の衣装が繋ぐこと

ライブ前半は19世紀フランスにインスパイアされたドレスで、後半は振袖をミックスさせた日本を感じさせる衣装で。
これは歴史や文化的にも本当に正しい選択だったと思います。
なぜならベルエポック時代は、日本の浮世絵にインスパイアされてフランスで生まれ開花した、アルフォンス・ミュシャなどで有名なアールヌーヴォー(フランス語で新芸術)と密接に関係しているからなのです。

この日のステージは音楽・演出・衣装とも、そんな歴史的事実や芸術をほのみせしつつ、ベルエポックにフランスと日本とアリプロ、過去と現代を組み合わせていった、実に見事な構成だったといえるのではないでしょうか。

アリカ様インタビュー!2つ目の衣装について


ーー2番目の赤い衣装についてお伺いします!
はじめだけ身につけていた赤のふりふりはベストのようなものでしょうか?いつ、誰が作ったものですか?

「QUEENDOM」衣装

宝野アリカ(以下、アリカ):ハードチュールのベストマントで、2011年ウィーンのお城で撮影した「QUEENDOM」のジャケット&MVの衣装のひとつです。もちろんこちらもTriple*fortuneのタダカイエさん作。
あれ以来ずっと真空パックみたいにして仕舞っていたものを今回引っ張り出して着ました。「転生離宮へ」「緋ノ月」のイメージにぴったりでした。

ーーこの衣装に使われていたのは、振袖羽織りですか? とても手が込んでいたので、詳細を知りたいです。

アリカ:羽織ではなくて、ドレスに振袖風な袖を作って縫いつけてあるのです。袖部分は白のサテン地に赤のレース地を重ねて自分で作りました。袖口にはプリーツフリルや房を付けたりしています。
これは数年前に「園遊会」(ファンクラブ勇侠会のイベント名)や何かのフェスで着たマーメイドのロングドレスで、金魚姫ドレスと名付けて気に入っていたものです。
今回裾を短くし、襟元に金や白のモールレースを付けてリメイクしました。短くした裾には、元のケミカルレースを少し垂れるように切り取って飾りみたいにしています。前半はこれに赤×白のチュールのオーバースカートを纏っています。昔作った白いチュールスカートに、赤のチュールを重ねて縫い付けました。今回ミシンが壊れていたのですべて手縫いです。

ーーこの衣装の髪や髪飾りについても教えてください。

黒髪ウィッグと髪飾り

アリカ:日本の各時代の曲を続けて歌うため、日本をイメージする赤×白の衣装にしたので、髪は黒かなあと思い、ミディアムの長さのストレートのウィッグをアレンジしました。そう、ウィッグもほとんど自分で用意します。特に地方公演はヘアメイクさんがいないので全部自分でやるんですよ。私はあまり黒髪まっすぐが似合わないので、前髪の長さを似合うようにカットしたり、少し逆毛を立ててみたり。髪には茶髪のリボン状のものを黒くスプレーしてくっつけ、羽根飾り(これはかつてヴェネツィア撮影「La Vita Romantica」(2010年)で使ったもの!これまでも何度か形を変えて使っています)と、あと何か足りないなと、以前和風の衣装の時に作った花簪から、菊とつまみ細工のさがりをもぎ取って髪リボンに添えました。
髪飾りはこれまで作ったものがたくさんあるのでよく解体して使い回しします。どうしてもこの色この形じゃなきゃだめ、というのがあったら容赦なく壊して使います(笑)。
東京公演の時はこれに大きなリボンをさらに加えました。たぶん以前子供用の着物帯で作ったリボン。さらにデコり、ヘアメイクのふーちゃん(橘房図さん)にくっつけてもらいました。

ーーライブでは「赤は着飽きた」的なことをライブで発言されていましたが、結局赤衣装にした理由はなんでしょうか。

「波羅蜜蓮華」ジャケット
「緋ノ月」ジャケット

アリカ:これは赤衣装ではなく、赤白衣装です(笑)。赤は着たくないと言ったのは「緋ノ月」のジャケット&MVにおいてのことです。前回のシングルの「波羅蜜蓮華」(2015年)が真っ赤な衣装だったので。数年経っていても同じ色を続けるのはいやだったんです。なので今後はまた赤いドレスの衣装とかイメージが合えば着るかも。でも赤×白の衣装は、いろんな雰囲気に変化させられるので好きでよく使いますね。

〈衣装3〉アンコール:エルフ耳付けた、すずらんの妖精

さてアンコールでは今までのイメージから一新、すずらんモチーフの衣装で登場。


すずらんをプリントしたロリィタブランドTriple fortuneプリント生地を使った衣装です。
こちらはタダカイエさんが雑誌『ゴシック&ロリータバイブル』撮影で一度きり使用したものでした。

まあるくふくらませたかぼちゃパンツがまた、すずらんの花の膨らみを感じさせるようです。
白と緑で統一、全身ですずらんを表現してくれたアリカ様の姿で、私たちに早い春の訪れを届けてくれたのでした!

すずらん服を着ての、ラストのラスト曲は「Café d’ALIで逢いましょう」でした。

デビュー30周年を迎えたALIPROJECT、今日からまた新しいシーズンを私たちに見せてくれることでしょう。

アリカ様インタビュー!すずらん衣装について


ーーすずらんの衣装について教えてください。

「繭百合、棘百合」より

アリカ:これは雑誌『Gothic & Lolita Bible 』53号「魔法使いの饗宴」がテーマのページで着た衣装です。
“ 鈴蘭の魔法使い”がイメージで、カイエさん作です。当時Triple*fortuneでスズランプリント商品を作っていて、同じ生地を使っています。
上はコルセット、スカート部分はスズランのひと花のように丸くなった形で、とても可愛くていつかまた着たいなと思っていました。
この生地では他に「風と共に鈴蘭」と名付けたロングドレスもカイエさんに作ってもらって「月光ソワレ」というストリングスコンサートで着用し、のちに写真集「繭百合、骨百合」の表紙と冒頭でも着ています。どちらも大好きなんです。

ーーアンコールでこの衣装を選んだのはなぜですか?

「緋ノ月」撮影でも使ったエルフ耳

アリカ:「Belle Époque」の中に「君影草」(スズランの別名)というバラードの曲があるので、それに合わせて選びました。やっと出番が来た!という感じ。
「森の祭典」という曲に合わせて、森の妖精のイメージで「緋ノ月」撮影でも使ったエルフ耳にしました。あまり見えなかったかもですが。人でないモノになりたい私にはぴったりの鈴蘭衣装+エルフ耳でした。

すずらん衣装にあわせた靴。




オトナアリスの大姐御、とも言える、ALI PROJECTのヴォーカリスト、宝野アリカさん。ALI PROJECTの独特の世界を描く歌詞やメロディ、そして私服を加えたライブ衣装もまさにオトナアリスのなせる業、ではありませんでしたか?
オトナアリスウォークの次回のライブレポートもお楽しみに!


取材&執筆/鈴木真理子(Otona Alice Walk編集部)

ライブ写真撮影/小野寺廣信
ライブ写真提供/勇侠会

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