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朝が終わる前に。

 遮光カーテンを開けると、たちまち朝日の粒子が飛び込んで、部屋の中で遊び出す。

 眩しい朝に目を細める。
 眩しさにはすぐに慣れ、それに合わせるように体が朝を受け入れ始める。

 外は遮光されることなく宇宙まですこんと抜けた青空の朝だ。
 地上でじわり時間をかけ味わうように赤く染めながら明けてきた朝の明け切ったところを後追いで捕まえた。

 カーテンは玉手箱だ。経過した時間に気づかずにいても、経年を諭してくれる人生の訓示。浦島太郎は玉手箱を明けて老け込んでしまったけれども、カーテンの玉手箱は人生の全行程からすれば畳の目ほどの経過しかワープしない。それでも、じわり明けた朝を突如明かす玉手箱だ。

 朝のうちに、朝を味わい終えなければならない。
 腹をすえ、決める。朝のうちに朝食をとっておこうと。朝が終わってしまう前に。

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