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宝探し。

 ずっと昔、日本人が24時間戦えますか? と問われ、世界経済を牽引しているさなかに、新宿の入り組んだ路地裏の建て替え不可、小さな古家物件を200万円の大枚そろえてぽんと買った女史がいた。高層建造物の樹木群が宙を刺し、携帯電波の囀りが聞こえ始めたIT黎明期、新築物件を都心に持つことなど大半の大人が夢に終わらせていた時代のことである。
「どうしてまた?」物件は1階一間、2階一間のキッチン付き風呂なし家屋。ボロ屋に食指は動かなかったが、200万円には羨望の針が振り切れた。
ーー猫を買うためーーと彼女は答えた。ーー賃貸では、限界があるのーー
 最新型快適空間よりも、彼女は猫といる幸せを優先させた。それも、手が届くどころか手中に収まるほどの価格で。
 
 あの出来事で、不動産の常識は不動産業者のためにあることを知った。
 今でも似たような現象が時々起こる。売値がつけられていた物件でもずっと買い手が付かなければ、カタログ落ちしていく。そうした忘れ去られた▼▼▼▼▼▼物件は、手中に収まるほどの価格で手に入る。
 
 だけど時代の波は、うまい話を遠く沖のほうまで追いやってしまったらしい。東京では都心ばかりでなく、郊外のまたその先程度では旨味のある物件は見つからない。
 まだ探し足りないのかもしれない。
 
 宝くじを当てにいくほど無謀な冒険ではあるまい。そう信じて、時間を見つけてはネットの波をあわよくば○○○○○の下心で渡り歩いてみようかなと。
 

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