見出し画像

再び雪の重い朝。

 保冷剤を敷き詰めたような雪景色が窓の外に広がっている。東京の下町は怠惰にもまだ動き始めてはいない。都庁や官庁、大手・中小企業がひしめくビジネス繁華街と違って、人が心のままに息をしているからだろう。客もまた布団から手足を出せずにいることを商店街の店主、店員は知っている。

 こんな日は、朝の遅い角の手作り豆腐店もさらに1テンポ遅れた営業開始をと決め込むかもしれない。かじかむ手つきでは、繊細に組み上げる絹漉しを揺らしてしまうかもしれない、揺らして崩しかねない、そんな余計なお節介を窓の内側で代考(※造語)しながら、白雪をはらむ灰色の空に目を向けた。

 白色をより分け地上に降らせたら、空には黒色の粒々が残っていくんだよ。見ててごらん、もっと雪を降らせたら、空はどんどん暗くなっていく。

 わたしの心も、どんどん暗くなっっていく。わたしの白雪はどこに降って行ってしまったの?

 雪が降り積もっても、ビジネス繁華街はカレンダーに小休止を入れない。朝のニュースは多少の遅延を伝えるだけで、運行は確保されていると伝えていた。

 下町はまだ眠りから覚めていないというのに、わたしも布団から出られずにいるというのに、ビジネス繁華街でいつものように稼働し始める会社が「おいで」と手招きしてるのよ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?