秋になると、決まってすること。

　たらふく食べて飲んで、次やることは、ダイエット。
　朝寝、朝風呂、血圧測れば基準値超えてる、やっぱり欠かせぬダイエット。
　運動もいいねぇと上げる腰も、すぐに息が上がるこの体。これもそれも、お肉が元気にベルトの上でぷるんぷるん、リズムに乗って踊るようになったから。盛夏を乗り切れ、そう自身に言い聞かせ、食べて体力つけた結果がこれだもの。嫌になっちゃう。で、秋に向け、気持ちが向かうよ、ダイエット。

　身ばかりじゃない。やる気もキリリと引き締めてまいりましょ。

　野や山は、都会に先駆けひと足お先に秋を深めてる。
　誰が運んできたのかなあ。

　おじきする稲穂がそよげば、育ち盛りのススキの穂が空に向かって伸びてゆく。秋の風は陽の光のスライサー。薄く削がれた１枚１枚にトンボが１匹、２匹と乗っていく。陸サーファーならぬ風の波乗り。
　ほれ。ここだよ。
　トンボとくれば、人差し指を立てずにいられよか。
　この指とまれ！

　秋になれば、決まってすること。トンボ、とまるかな？　もそのひとつ。

　それでも忘れちゃならない。トンボのようにスイスイ俊敏に動けるスマートな体に戻さなきゃ。

　秋になればなったでたくさん食べたい。秋になるとやりたいことがたくさんあるよ、食欲に走るのもそのうちのひとつ。
　でもさ、食べるためには溜め込める痩せた体にしておかなくちゃ。だけど、思いだけが先行してくよ、ダイエット。

　あ。立てた指の先にトンボ、とまった。

　なんでもないことなのに、不思議と嬉しい。こんな偶然と同じように、朝起きたら痩せていた、なんて奇跡が起きないかな。

　痩身への道。近道ありゃせぬ、ダイエット。