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浮気な彼女のその後。
僕の知るナオミはパパ活なんてしていなかった。推しはいたけれども、貢ぐ対象ではなく、手に入れたい相手だった。
ナオミの心を射止めた男はどこぞの地下アイドルではなく、地道な英語の教師だったけれども、カリフォルニア大学出のハンサムな金髪という点で、平凡とは一線を画していた。
ナオミの夢は、西海岸へのIターン移住。海外赴任の日本人では帰国が前提だし、かっこうがつかないから、ピュアなアメリカ人らしい男でなければならなかった。あくまでもお試し移住ではなく永住にこだわった。
それに好みの男でなければならなかったこともあり、ハンサムという点で彼はナオミに気に入られた。状況からすれば、No.1候補であることがわかる。より以上が見つかれば、彼への推しは消滅するだろう気配はそのころから漂っていた。彼もまた、ナオミの心変わりに一抹の不安を感じ取っていたのかもしれない。
彼はナオミを嫌っているわけではなかったが、結婚相手として的を絞ることができなかったのは、ナオミの心変わりを懸念したこともあるかもしれないけれども、いちばんの理由は男遊び好きがすぎたからだ。
ナオミは、言い寄られるのも当然なくらいに綺麗な女だった。言い寄る男が気に入ればネオンの隙間に消えていく。消えなければ、お眼鏡にかなう男がいなかった証。
わかりやすい女だった。
ナオミと寝たことはない。誘われたこともない。ナオミの心を射止めた男と親友だったことが超えられない防潮堤となってくれた。
ナオミには一線を越える癖があったけれども、それは友情の絆という外堀の向こう側での話。いわゆる外遊というやつだ。国内では味わえない刺激を海外に求めるーーナオミにとって男遊びは容易い留学のようなものだったのだと思う。だが内郭では心を射止めた男に一途で、彼と線で結ばれた縁に痴情を差しはさむような真似はしなかった。内郭では静粛な女だった。まるで敬虔なクリスチャンのようにさえ見えた。見えただけで、口を開くとたまに武勇伝がこぼれ出る。男の名前は覚えちゃいないのに、プレイはしっかり記憶にとどめていた。彼女にとって男は生きるために食らう食物だった。本能が耳元で囁くと、男を喰らう悦楽に抗えなくなる。
ナオミのその後は知らない。帰国した彼とはここのところ疎遠になって、わざわざ訊くようなことでもなくなっている。ナオミは彼にとって彼女だったけれども、僕にとっては友の彼女でしかない。尋ねるには縁が遠い。不埒に思われるのも困る。
ナオミのその後にはいくつかの可能性があった。一般的に考えられる道は3とおり。彼の元にいるか、日本にいるか。願わくば、彼と一緒に渡米したはいいものの、より以上を見つけてちゃっかり、というのでなければいいのだけれど。
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