入りたいお風呂ってある。そこに身を沈めると、さぞ気持ちいいだろうなあ、という妄想が、夏の入道雲を追い越して大きく膨らむお風呂。
鶴瓶落としの秋が運ぶ初物涼風を裸に浴びて、つま先からとぷっ。
うっひゃあ、想像しただけでたまらない。
広葉樹が夏色を落としてほんのり紅の色香を抱く山あいの露天もいい。温泉でなくてもいい。薪で炊く、ヒノキの巨木をくり抜いた一枚板ならぬ一本樹木の湯船もいい。五郎石の家の石風呂に入れるものならドラマの共演者になりきって、ひたって浸かる風呂もいい。
秋になると思い出す、これまでの入浴の数々。それら過去の記録の数々が、入浴欲の原動力になっている。まるで溜めに溜めた力のように、遠投を今か今かと待ち受ける。
第7波が落ち着きを見せ、第8波が押し寄せる前に、その引き際狙ってするりとこの身を潜ませに出かけたい。想像に入り浸った毎日から抜け出して、惹かれるお風呂に出かけたい。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?