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反動、不動。

 行きすぎれば、戻らなければならなくなる。電車だって停車位置を通り過ぎるとバックで戻る。社会は右に左に大きく揺れながら前進してる。その横ぶれは度が過ぎれば反動で反対側に大きく振れていく。行き過ぎは、反省の源泉。「ちょっとくらいならいいだろう」は常態化することで罪悪感が薄れていって、蓋がこじ開けられたら自民党党内はアリの巣をつついたみたいに大騒ぎ。内緒の裏金、反動の勢いが凄過ぎて、あれよという間に世間に拡散してしまったよ。

 健康志向のレイヤーにもその横ぶれが襲っていた。快眠に必要栄養素取得、中性脂肪撲滅に血圧正常化。健康志向の高まりが、あまりに頭でっかちになり過ぎて、大きく横に触れていた。
 メトロノームなら望むと望まざるとにかかわらず、一定リズムでカチコチカチコチ、行ったら戻るの一定リズムを刻んでる。ところが人の欲求はそうはいかない。血の通わぬ機械と違ってなまじ血が通っているものだから、その血が胸騒ぎを引き起こし、欲が欲を呼んでエスカレートしていくんだよ。ピサの斜塔じゃあるまいし、まだ大丈夫とその傾斜角度を深くする。「もう少し、行っちゃえ」と消費者ニーズを刺激した開発陣が頑張っちゃったものだから、思わぬところで生じた不具合が看過されてしまったんだね。今じゃ収集するのにおおわらわ。

 人は反省の生き物。消費者だって黙っちゃいない。問題あるなら止めちゃおう。行き過ぎた愚行は理知的解釈で帳尻合わす。

 世の健康志向は、行き過ぎていたのかもしれないね。ここいらで反動の振り子をふるわにゃならん。

 たまにはいいじゃないの、不健康志向。夜更かしに、美味しいものをいつもよりたくさんいただく。美味いものは体に悪いっていうけれど、揺さぶりの不健康志向なら寛容に受け止めたっていいじゃない。

 だいじょうぶ。不健康も所詮は揺さぶり。すぐに反動で健康志向に戻る。束の間の快楽、大目に見てよ、しばし目を瞑っていてちょうだいな。

 言い訳はいつの世も何ものにも揺さぶられずに腹の底に座っている。

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