にゃおん日記ーー夢の食う寝る遊ぶ。

　ぼくが生まれるその昔、食う寝る遊ぶに心酔した時代があったとさ。営業接待領収書、終電逃してハイヤー帰り、実質賃金が世の物価を上まわっていた時代だったとさ。亭主元気で留守がちで、猛烈社員は「24時間戦えますか？」と真剣勝負の刃を喉元に突きつけられていたってさ。多忙が自慢で、潤沢な給料はBMWを六本木のカローラにしたってさ。ワーク・ライフ・アンバランスで、極度に仕事に目を向けさせられていた時代。GDPで日本を世界一位に押し上げて、飛ぶ鳥をも落とす勢いだった。だけど、残業に追われてばかりじゃ、命が縮む。口では仕事第一を叫びながらも、本音は無い物ねだりで食う寝る遊ぶを夢見てたってわけなのさ。

　なあんだ。時代は変わっていないんだとぼくは思った。実質賃金が物価上昇に追いつかない現代だって、食う寝る遊ぶはいつだってぼくの心をとらえて離さない。夢に落ちればいつだって浮かぶ幸せの三大要素。一富士二鷹三茄子ならぬ、一食う二寝る三遊ぶなんだもんね。
　本音は首尾一貫、食って、寝て、遊んでいられりゃ文句なし、天下泰平の……むニャ。

ーー猫はいいよなぁ。仕事しないでぐうたらできて。ああ、犬猫のように生きたいなあ。ーー

　昭和から、本音を漏らす戦うサラリーマンの声が聞こえてきた、ようなーーそんな夢の途中に、ぼくはいる。

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