そろり名画に入り込む。
黒澤明の『夢』にしても、原田マハの『楽園のカンヴァス』にしても、アートへの傾倒の強さはカンヴァスの壁を破るようで、主人公が絵画の中に入り込む。
銀幕界で古くはアラン・ドロン出演のオムニバス『世にも奇妙な物語』でも、アランが出ない一編で、刑事に追われた主人公が絵画の中にドロンと消えた。
そろり絵画に踏み入るパスポートは、絵画に溺れた者だけが手にできる特権か。
絵画にお邪魔するーー話には聞くが未だ実現できない「知らずの領域」、まだ見ぬ世界に憧れはする。もしや、文字に、文脈に溺れる者は、二兎目を追えぬということなのか。
思考は不思議を深くする。だがその深みは、どこまで深掘りしても絵画の扉には届かない。
絵に入り込む、という現象は、絵画探求者のメタファーなのか? あるいは魂の現実か?
今宵また、絵画に入りこむ憧れの夢を見る。
読書人間『楽園のカンヴァス』原田マハ
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