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中間地点。

 距離には、時間的中間地点と距離的中間地点がある。ある売れっ子作家がかつて「35歳を折り返し地点」と決めたと書いた。人生70年の決意がそこに見てとれる。時間的中間地点は否が応でも上り詰めた絶頂から容赦なく引き算を繰り出してくる。目指すはマラソンと違って、歓喜と祝福のゴールではない。開悟と諦観の収束だ。
 その売れっ子作家も、御年70歳を超え数年が経った。まだまだ、という気骨が伝わってきそうな旺盛な創作活動ぶりである。宮崎さんの「あともう少し」と、切れかかった息にピリオドを打つつもりが「ついもう一本」映画を制作してしまうのとは違う。
 聞く耳を違えれば、なんだか盛りを過ぎた政治家の言い訳みたいでもあるけれど、時間的中間地点を作家生命の距離的中間地点に置き換えると、まだやっと真ん中を少し超えたあたりにいそうな気配を漂わせていた。

 人には、時間的中間地点とは別に、距離的中間地点というものがある。

 そういやリタイア後の再就職って、当てはめるとどちらの中間地点になるんだろう? よく第二の人生と捉えられることを踏まえると、そこでやっと峠を越えることになる。
 人にはもうひとつ。精神的中間地点があったことにようやく気づくことになる。

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