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【就活】SI業界のビジネスモデルと市場規模

はじめに(当記事の目的)

SIer、SI業界に興味があるけどネットで悪い評判を見て不安になる…という就活生のために入門編としてビジネスモデルと市場規模をざっくりと整理してみました。業界研究にお役立てください。

本記事の対象者

SI業界に興味のある就活生あるいは転職者

SI業界とは

出典:筆者作成資料

SI業界(System Integration)は、顧客企業のシステム構築や運用を受託する産業で、この業界に属する企業は「SIer」と呼ばれています。

日本標準産業分類では「情報サービス業」、東洋経済新聞や日経新聞といったメディアでは「ITサービス業」といった名称で呼ばれていたりします。こういったキーワードを覚えておくとネットや書籍で業界動向を調べるときに役立ちます。

SI業界の市場規模

出典:総務省, 令和3年度 ICTの経済分析に関する調査
出典:総務省, 令和3年度 ICTの経済分析に関する調査

SI業界は情報サービス業であると書きましたが、その市場規模を見てみましょう。総務省の資料より抜粋しました。

まず1つの目の資料は実質GDPの産業別の割合です。IT業界(情報通信産業)は全産業の10.7%を占める104.8兆円で国内最大の産業となっています。

そして2つ目の資料は情報通信産業における産業割合です。SI業界(情報サービス業)の市場規模は19.7兆円であり、IT業界の中でも最大規模の産業です。我々がよく目にするインターネット分野は年々増加しているとはいえ4.4兆円ぐらいなので、SI業界の規模がいかに大きいのかを感じますね。

たまに「SIerオワコン」といったコメントをネット上で目にしますが、こういった資料からはオワコンではなくむしろ安定した産業であることが分かります。

SI業界のビジネスモデル

SI業界の市場規模が分かったところで、SI業界がどういったビジネスなのかを勉強したいと思います。

冒頭にも書いた通り、SI業界のビジネスは顧客企業からシステム構築や運用業務を受託し、その対価を受け取ります。シンプルな収益構造ですね。

SI業界の企業が受託するサービス範囲は下記の通りです。

出典:筆者作成資料

大手SIerはシステム企画〜運用保守をサービス領域として受託できるようにしています。大手SIerに頼めばシステム構築から運用保守までをまるっとお任せできるわけですね。これによって、顧客企業は自社事業に経営資源を注力することができ競争力を強化できるという仕組みです。

余談ですが、上図にある通り、ITコンサル企業はIT戦略・企画・要件定義を事業領域としているのでSIerとは競合関係にあります。また、アクセンチュアや野村総研といった企業は最上流工程から運用保守まで一貫してサービスを提供できるので非常に強力です。こういう観点も業界研究をすると楽しめますね。

(参考1)システム構築工程の概要

出典:筆者作成資料

先程のシステム構築の流れについて各工程の概要を説明します。参考程度にどうぞ。

IT戦略

ITを企業の経営戦略の一部としていかに利用するか、企業の中長期的かつ具体的な方針・計画する工程。

企画

IT戦略に基づいて将来像を定め、システム化する範囲とその順序を決める工程。スクラッチなのかパッケージやクラウドを使うのかなど、開発方針や運用方針等の策定も含まれる。(システム化構想・計画と工程を分けて表記する場合もある)

要件定義

前工程のシステム化計画に基づいて各々のシステム開発における機能要件や非機能要件を抽出し、構築するシステム内容を具体化する工程。

設計

定めた要件に沿ってシステムの具体的な仕様を定める工程。画面や帳票のレイアウト、ボタンの配置などもこの段階で決定する。厳密には、利用者側の見える範囲(外部構造)を定義する「基本設計」、内部構造を定義する「詳細設計」に分けられる。

実装

設計書に基づいてソフトウェアやインフラ面を実装する工程。ソフトウェアはプログラミング、インフラはOSやミドルウェアの導入・各種設定作業を行う。

テスト

実装したシステムが設計あるいは要件定義通りの動作をするかを検証していく工程。この工程も単体テスト、結合テスト、総合テスト、そして顧客企業側の受け入れテスト(運用テスト)といったように検証内容によって細分化される。

本番移行〜運用保守

テスト完了後は本番環境にシステムを移行し業務利用が開始される。一定のフォロー期間を経た後に運用保守工程となる。運用保守では改良や補修をしながらシステムの安定稼働を維持する。

(参考2)契約の種類

参考情報その2。ちょっと難しい話ですが、システム構築・運用の受託契約には「準委任」と「請負」の2種類の契約タイプがあり、受託する業務内容に応じて使い分けられています。

システム開発工程における契約例を下記に載せました。

出典:筆者作成資料

顧客企業側が主体的に行う工程は「準委任契約」にて顧客企業を支援します。料金は作業時間に応じて支払われます。

一方、何を作るかが明確になった開発工程、つまりSIer側が主体的に行う工程は「請負契約」にてシステムの完成責任を負うのが一般的です。ここでは作業時間は関係なく、構築するシステム内容に対して料金が設定されます。

SESについて

SI業界で度々耳にするであろう言葉に「SES(System Engineering Service)」があります。エンジニアの技術力を提供するサービスのことを指しますが、契約としては準委任契約と同じです。システム開発あるいは運用保守の支援する作業時間に対して支払いが行われます。

SI業界では構築するシステム規模が大きいことから、顧客企業から受託したシステム構築の特性に応じて下請け企業に一部業務を再委託します。この際の元請けと下請けとの契約の多くは準委任契約(別名:SES)となっています。

(参考3)なぜSIと呼ばれるのか?

参考情報その3。雑学です。いったいどこで"SI"(システムインテグレーション)という言葉が生まれたのでしょうか?

実は、システムインテグレーションはIBMのサービス名称だそうです。

1980年〜90年代にかけて世界のトップランナーであったIBMは前述のアウトソーシングサービスを「システムインテグレーション」というかっこいい名称を付けて提供し始めたわけですね。それを富士通とかNECとかの大手コンピュータメーカーが模範したことで広がったというわけです。IBMの具体的なサービス内容については下記引用を参照してください。

1990年代の中頃、メインフレームからオープンシステム(分散システム)に移行すると、システムを構成する製品はマルチベンダーの製造販売となり、各製品の接続性の担保が難しい状況になった。当時、各製品の組み合わせや相性問題は利用者側の問題とされていたが、一社を窓口に発注にすれば、他社製品も併せて、全体の組み合わせ問題を解決するというサービスをIBMが開始した。IBMはこのサービス事業を「システム・インテグレーション」と名付けた。

出典:Wikipedia, システムインテグレーション

さいごに

今回はSI業界の入門として市場規模やビジネスモデルについて勉強しました。SI業界は情報通信産業(いわゆるIT業界)の中でも規模が大きく、安定した産業なので就職先として人気ですね。当記事が業界研究の参考になると幸いです。

では今回はここまでです。
最後までお読みいただきありがとうございました。

参考資料、参考リンク

IT業界徹底研究就職ガイド 2024年版 -日経BPムック
システムインテグレーション-Wikipedia
令和3年度 ICTの経済分析に関する調査-総務省

更新履歴

2023年1月14日 初回公開

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