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【就活】SI業界のIT職種と仕事内容

はじめに(当記事の目的)

大手SIerに興味のある就活生や転職者の方々向けに、SI業界のIT職種について説明します。IT職種というとエンジニアをイメージすると思いますが、専門分野によって職種が分類されているので、職種と役割(仕事内容)を理解しておくと就職先やキャリアを考える際に役立つと思います。

本記事の対象者

SI業界に興味のある就活生あるいは転職者

IT職種一覧(IPA)

まず最初にIT職種にはどのようなものがあるのかを一覧で紹介しておきたいと思います。ここではSIerに限らずIT業界全体での職種となります。

下記は、経済産業省管轄の情報処理推進機構(以下、IPA)で整理されたITスキル標準による11の職種です。

出典:IPA「技術者とスキル標準」を参考に筆者作成

上記は多くの企業が参考にしており、新卒採用やキャリア採用での募集職種として書かれていたりするので知っておいて損はないと思います。

今回は上記の中から、SI業界と深い関係のある7つの職種に限定して話をします。具体的な下記の職種です。

①ITコンサルタント
②ITアーキテクト
③プロジェクトマネジメント
④ITスペシャリスト
⑤アプリケーションスペシャリスト
⑥カスタマーサービス
⑦ITサービスマネジメント

SIerのIT職種(工程との関係)

SIerでの代表的な職種は先ほどの7つとなりますが、各職種における活動領域は下記の通りです。

システム構築には様々な工程が必要で、その各工程において専門家が自身の役割を果たすことで1つのシステムが構築されるようになっています。

出典:筆者作成資料

システム構築や運用保守を担うIT職種と言われると、どうしてもプログラミングをしているエンジニアをイメージすると思いますが、上記のように様々な専門家がいるので、エンジニアよりも「何かしらのIT分野の専門家」として考えた方が理解しやすいと思います。

それでは各職種について説明していきましょう。

①ITコンサルタント

出典:筆者作成資料

ITコンサルタント職と聞くとコンサル会社のイメージが強いと思いますが、大手SIerの中にはITコンサルタント職がキャリアパスとして設定されている企業もあります。

とはいえSIerはシステム構築がメイン事業であるため、コンサルティングはシステム構築を受注するための種まき的な位置付けであり事業規模も小さめです。野村総研はコンサルティング事業とシステム構築事業が一体として展開できていますが、コンサルティング事業の売上割合は7%ほどです。

ITコンサルタントの仕事概要

ITコンサルタントは、事業目標達成に向けたIT戦略の策定、IT戦略実行に向けたシステム企画(システム構想)の策定、具体的なシステム要件を抽出する要件定義といった上流工程を担う専門家です。

システム構築プロジェクトが立ち上がるとITコンサルタントの役割は終了となり、指揮管理はプロマネ、アプリ開発はアプリケーションスペシャリスト、インフラ構築はITスペシャリストといったように役割分担がされて後続の工程が進められます。

このようにITコンサルタントはシステム構築工程における最上流工程を担う専門家であることからIT面の知識だけでなく、顧客事業の深い知識が求められます。

②ITアーキテクト

出典:筆者作成資料

ITアーキテクトはインフラ構成の専門家で、SIerでは基盤部門(インフラ部門)の上位職として設定されている職種です。

新人から若手社員のうちは特定基盤のスペシャリスト(ネットワークやデータベース等)として経験を積みますが、その後のステップアップとして基盤構成全体を司る職種であるITアーキテクトのキャリアパスが設けられています。

ITアーキテクトの仕事概要

ITアーキテクトはシステム構築の上流工程から下流工程まで幅広い活動領域を持っていますが、どちらかというと上流工程の活動が中心になります。

例えば、顧客企業でIoT技術を用いた予知保全システム構築の企画が立ち上げられた際には、現状のインフラ構成を調査しつつ、どのようなインフラを新たに構築すればシステム要件を実現できるかを策定します。下記のようなアーキテクチャ図を描き、それぞれの要素における概算見積もりも担当範囲です。必要に応じて各分野のITスペシャリストに協力を依頼することもあります。

出典:スカイアーチネットワークス, 公式サイト

その後、開発工程に入るとプロジェクトの指揮管理はプロマネの仕事となり、ITアーキテクトは設計書やテスト結果をレビュー(品質確認)する役割となります。

③プロジェクトマネジメント

出典:筆者作成資料

プロジェクトマネジメント(プロジェクトマネージャ)は、システム構築プロジェクトの計画立案から実行の指揮管理を担う職種です。

アプリやインフラ職からプロマネのキャリアを歩むのが一般的で、「アプリ系プロマネ」や「インフラ系プロマネ」のように、何かしらの得意分野を持つようになります。(私の場合は製造業アプリ系のプロマネ)

大手SIerではだいたい5~6割はプロマネ職になりますので、入社3〜5年目ぐらいからプロマネとしてプロジェクトに参画することになると思います。

プロマネの仕事概要

プロマネはシステム構築の上流工程から下流工程まで幅広く活動します。上流工程ではプロジェクト計画を策定し、開発工程に入ると配下のメンバーを指揮管理しながら作業を進めていきます。

基本的に自身の手は動かさずにエクセルの工程表(WBS)を見つつ作業担当者と会話をしながら計画通りに作業が進むように段取りをするのが開発工程でのプロマネの役割です。(プロジェクトの規模が小さいとプロマネ自身が一部の作業を兼務する場合もある)

出典:ファーストペンギン, 公式サイト

余談ですが、Webサービス事業(Web業界)ではプロジェクトの立ち上げ・要員管理・予算管理を担う「プロデューサー」、プロジェクトの実行管理を担う「ディレクター」に分かれますが、SI業界のプロジェクトマネージャ職はこれらの両方が担う職種です。

④ITスペシャリスト

出典:筆者作成資料

ITスペシャリストは基盤分野を専門とする職種で、下記のように専門分野(得意分野)が分かれています。

ITスペシャリストの専門分野(例)
・プラットフォーム
・ネットワーク
・データベース
・セキュリティ
・アプリケーション共通基盤

会社によってグループの分け方は異なるので上記とは違うかもしれませんが、基盤における専門家を総称して「ITスペシャリスト」と定義されます。

個人的にはITスペシャリストよりも「基盤系スペシャリスト」あるいは「インフラ系スペシャリスト」の方がしっくりくるのですが、IPAで定義されている職種なのでそれに従います。

ITスペシャリストの仕事概要

ITスペシャリストは要件定義から参画する場合が多いと思います。ITアーキテクトが基盤構成を策定し、それぞれの基盤要素に対してITスペシャリストが割り当てられて具体的なシステム要件を落とし込んでいくイメージです。

以降は各ITスペシャリストが担当する基盤要素に対して設計・実装(ミドルウェア導入〜各種設定、インスタンス作成など)・テストを行い、アプリ担当者に環境を引き渡す流れとなります。

作業の段取りはプロマネが担う場合もありますし、ITアーキテクトやITスペシャリストの誰かがサブプロマネとなって他のITスペシャリストの指揮管理を担う場合もあります。

プロジェクト完了後(システム構築完了後)は、運用保守工程となります。担当する基盤分野に応じて稼働確認や定期的なバージョンアップ等のメンテナンスを行うのもITスペシャリストの仕事です。

⑤アプリケーションスペシャリスト

出典:筆者作成資料

アプリケーションスペシャリストは業務アプリを専門とする職種で、担当する顧客業種に応じて専門分野が分かれます。

例えば金融分野の専門家であっても、銀行・証券・保険・クレジットカードと細分化されますし、銀行の中でも預金・貸付・為替…と更に細分化されてグループ分けがされています。

転職する際にはおおよそ「銀行・証券・保険・クレジットカード」といった分類での経験年数が求められることが多いと感じます。

アプリケーションスペシャリストの仕事概要

アプリケーションスペシャリストも要件定義から参画する場合が多いですね。アプリケーションスペシャリストのベテラン社員が顧客とのヒアリングを重ねながら必要な機能群を洗い出し、画面やバッチ機能毎に担当者を割り振って具体的なシステム要件を落とし込んでいきます。

以降は、設計・実装・テストが進められます。アプリケーションスペシャリストは設計書作成・プログラミング・テストといった作業を担う職種なので世間一般的なエンジニア像に近いと思います。

プログラミング工程は最も人手が必要とされる工程なので、アプリケーションスペシャリストは数ヶ月のスポット対応で現場に参画する人も多くなります。転職サイトを見てもアプリケーションエンジニアは最も求人数の多い職種です。

⑥カスタマサービス

出典:筆者作成資料

カスタマサービスは主にハードウェアやソフトウェアの導入・運用保守を専門とする職種です。ハードウェアはパソコン等の機器設備で、ソフトウェアはMicrosoftのOfficeソフトやセキュリティソフトといった外部ベンダー製品を指します。

従来から導入しているハードウェアやソフトウェアのIT知識が求められる職種でしたが、昨今はクラウドサービスの活用が増えたことからネットワークやセキュリティ面の知識まで求められるようになっています。

カスタマサービスの仕事概要

カスタマサービスは、顧客のIT環境に合致したハードウェアやソフトウェアの導入・カスタマイズ・保守・サポート等の幅広い業務を担います。

前述のように昨今はクラウドサービスの活用が増えています。利用する端末にしても一昔前のような1台1台に細かくセットアップする力作業ではなく、仮想デスクトップを用いてセキュリティ確保やコスト削減ができるように仕組みが作られています(下記参考)。

出典:仮想デスクトップ管理, HITACHI

⑦ITサービスマネジメント

出典:筆者作成資料

ITサービスマネジメント(システム運用者)は、構築したシステムを安定して利用者に使ってもらえるように活動する職種です。

カスタマサービスがハードウェアや市販ソフトウェアに関する窓口なのに対して、ITサービスマネジメントは構築したシステム関する窓口の部門となります。サーバー管理者をイメージすると分かりやすいかもしれません。

ITサービスマネジメントの仕事概要

ITサービスマネジメントの仕事は、システムの安定稼働に向けて定期的なログ監視や資源使用率の監視からシステム異常につながるリスクがあれば予防処置を講じます。顧客からの問い合わせ対応も含まれます。


長文となりましたが職種の説明は以上です。

おわりに

今回はSI業界の代表的なIT職種について説明をしてきました。

上流工程を担う職種の方が年収は高い傾向がありますが、それだけ求められるスキル(能力)は高くなるのでやはり自分がどういう働き方やキャリアを目指したいかによると思います。

ITコンサルタントを目指すならばコンサル会社を受けた方がいいですが、それ以外の職種に関してはSIerの方が幅広い選択肢があるので部署異動によるキャリアチェンジもある程度は可能です。

では今回はここまでです。
最後までお読みいただきありがとうございました。

参考資料、参考リンク

ITスキル標準V3-IPA

ITスキル標準V3 2011 カスタマサービス職種改訂概要-IPA

i コンピテンシ ディクショナリ-IPA

IoTプラットフォーム-スカイアーチネットワークス

ガントチャート-株式会社ファーストペンギン

仮想デスクトップ管理-HITACHI

更新履歴

2023年1月28日 初回公開

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