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ベトナム滞在記「アメリカに勝った国負けた国」 はじめに

ベトナムより帰って、早4年が経とうとしています。この時期に、このベトナム滞在記の製本を思い立ったのは人に進められたこともありますが、本という形にして残しておきたいと思うようになったからです。それは、4年経った今も、自分がしたためた文章が一過性のものでなく、陳腐化していないのではないか、と思ったからです。
ベトナムは、今や急速な流れの中にあり、私が滞在した1年と言うものは、あっという間に過去のものになるのではないかと思っていましたが、どうも様子をうかがってみますとそうではないようです。通貨であるドンは高くなるどころか切り下げまで行われていて、生産拠点の増加や外資の流入にもかかわらず、国力と言いますか、経済力と言いますか思ったほどレベルアップしていないのが現状のようです。
日本・韓国を含めた先進国は、ベトナムの安く勤勉な労働力が目的でせっせと外貨をつぎ込んで、ベトナム製の商品を世界中で売りさばいています。
ベトナムの現状を見てみますと、資本主義を容認しつつ、体制では共産主義を維持するというドイモイ政策の浸透は進んでいるようですが、そこには、起業家という“苗”が育ちにくい土壌・体質があり、折角の大量の外貨や生産技術も生かせないでいるのではないでしょうか。また、投資した企業の国も、生産拠点が少なくなり失業率の増加や技術の空洞化をまねいています。双方にとって全く悲しむべき状態になってきています。
こういった現状を考えるとき、4年前にしたためたこの滞在記を製本化するのはあながち無駄なことではないと思うようになって来ました。ベトナムで出会ったファン・ボイ・チャウとその精神、少しでも伝えていけたらと思っています。
帰国して、ファン・ボイ・チャウの建立した記念碑のある袋井市の「浅羽ベトナム会」で精力的に活動しておられる代表者の安間幸甫氏と出会い、懇意にしていただいています。これも何か不思議なご縁を感じています。安間氏は今、全国からの募金事業を展開し、フエ市にあるファン・ボイ・チャウ記念館に「東遊運動記念の碑」寄贈を計画しておられます。
ベトナムで出会った若者たちは、優秀で立派に私の期待に応えてくれているようです。今後も日越友好の推進役に育って行ってくれるものと確信しています。
まさに、それもこれも“一期一会”・・・・・。

2010年3月31日
篠田 泰之


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