サカナトライブ (2014/1/24)

SAKANATRIBE(1月24日)「0から100がテーマのツアー」と明かされたSAKANATRIBE(サカナ族)。アルバムツアーではないため、「演奏したい曲を選んだ」とデビューアルバムから新譜までの楽曲が盛りだくさんに披露された。
サカナクションのライブを見て感じたことは、とにかく立体的である、ということだ。オープニングではアンプから出る生音だけが空間を伝い、時間が流れるにつれ、だんだんスピーカーを通して音が
大きくなっていく。小さく空気を揺らしていた音が、気がついたときにはお腹の中心まで響き、会場の空気に自分が飲み込まれているような感覚を覚えた。上から降ってくるような照明、横から迫って
くるようなオイルアートにも臨場感があり、聴覚だけでなく視覚に訴えかける彼らのパフォーマンスの強さを感じた。

本編の序盤は「サンプル」や「表参道26時」などダンスミュージック的な音の連なりによって、身体が動かされていった。圧倒的な立体表現を前にすると、曲に共感することやバンドの生演奏に感激するような精神的な部分よりも、身体感覚の方が反応するのかもしれない。音の渦の中で、肉体的な個でしかない自分の人間としての実体、そしてその個体の中を覗いてみたら空っぽな空洞が広がっているだけかもしれない自分の姿を垣間見た。空気を伝う音が0から100に増していく中で、オーディエンスの動きは大きくなり、たくさんの個がただただ音に身を任せているように見えた。後半の「夜の踊り子」、「アイデンティティ」では100の音の中で、中身を求めて踊る身体の小さな爆発が誘発された。

アンコール時には楽曲の思い出話や裏話も聞け、アットホームな雰囲気でライブは終わった。「ミュージック」や新曲「グッドバイ」は涙腺が少し熱くなるぐらい胸に直接響き、CDやテレビで聴くのとは全く別の感動があった。MCで山口も言っていたけれど、サカナクションは曲だけではなくライブに関わる人全員が合わさってサカナクションなのだということを実感した。

SAKANATRIBEは変わり続けるサカナクションの過去から現在までを見ることのできるライブであったと同時に、空間を駆使した壮大なパフォーマンスによって彼らの鮮やかなエンターテインメント性が伝わるライブであった。サカナ族歴が100の人にとってはもちろん、私のような0に近い人にとっても素晴らしいライブであった。

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