星野源 STRANGER


星野源が星野源という殻を突き破った。3rdアルバム『STRANGER』からは、穏やかに優しく心の隙間に入り込むシンガーソングライター星野源だけではなく、爆発的で感情的な動きを見せる星野源の姿が見える。アルバムを象徴する一曲目“化物” のレコーディング直後にくも膜下出血で倒れたという事実からも、一層彼が注いだものの熱度が感じられ、胸と目頭が熱くなる。

STRANGER—「自分の中の知らない自分」。星野源はアルバム12曲を通して、STRANGERを見つけていくことが生きることの一つの意味だと語りかけている気がする。弾け出すカラフルなサウンドが特徴の“化物”には、お腹の底のエネルギーをうねらせて、単調な日常生活の中で埋もれさせてしまった夢への原動力を呼び起こす力がある。どこか幻想的で儚げな“レコードノイズ”を聴いていると、記憶の底へと遡り、原風景を見ているような感覚に陥る。人生の意味なんてわからない。だが、私という存在は今ここで実感している私だけではなく、まだ心に潜んでいる私、夢の中の私、忘れてしまった過去の私、終わりなく続く未来の私、と果てしない。生きよう。聞き終わった後、いつもの日常は少しだけ鮮やかで、少しだけ心が軽い。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?