その歌の届く先
川沿いのその場所で
あの子とよく訪れた路上ライブ
夕暮れ時の人々が行き交う隣で
彼らはいつも歌っていた
人前で歌うのは届けたい人や
届けたい想い、叶えたい夢が
あるからだと思っていた
彼らは何を思って歌っているのか
その歌のチョイスを聴きながら想像していた
その内、
隣にいるあの子の目には、
そこで歌う彼の姿だけが映るようになった
彼もまた、
彼女のために歌うようになった
誰かを想う歌を聴くのは良いものだ
それが心の奥に響いてくる
ひとつの恋の始まりに響いていたあの歌は
今も彼らの間に流れているのだろうか