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雨の夜、バス停

雨の夜

ひとりバスを待つ

小さな屋根の下
青いベンチに座っていると
黒猫がぴょんと膝にのってきた

いきなり
飛びのられたのは
生まれてはじめてだ

動物にトラウマのある母の
影響もあって
幼い頃から触れ合ったのは
近所の馬くらい

ふくふくと太っている

美味しいもの食べさせてもらってるね。

すっかりリラックスしているこの子に
身体の力がぬけていく

悲しいかな、警戒心の強い私だけど
この子にはあっという間に
解かれてしまった

おまえ、甘え上手やね。

そっと触れると
体温が気持ちよかった

そのまま
膝の上でじっとしている

高い光が足元にさしてきた

バスがきた

立とうとするけれど
ぎゅっと離れようとはしない

どうしたの?

顔をのぞくと
行かないで、と言われてる気がした

置いていくのも忍びないけど
これを逃すと帰れない

後ろ髪を引かれる思いで、
そっとベンチにおろす

不思議に懐かしい黒猫だった

どこかで会ったことあったかな。
またね..。

窓越しにベンチをみると
まだそこに座っていた

あの夜以来、あの子には会えなかった

雨の夜のバス停前
ふと思い出した
小さな出会い