明恵
まがった背中に大きな籠
昔話のおばあさんのような姿
たまの休みに母の田舎に帰ると
いつも畑に連れて行ってくれた
艶のある形のいい茄子
お店では見かけないような
大きく育った葉物野菜
澄んだ水が流れる道を
あなたと二人で歩いた
築120年の古い家には、
土間に隠し戸があって
そこを開けるとおばあちゃんの部屋がある
姿が見えない時はその扉を開ける
オレンジの電球がついていれば
そこにいる
目の前のことを丁寧に
慣れた手つきで素早く
釜戸に向かう時
箒を手に持つ時
土間でお菓子を作る時
畑で野菜に触れる時
ゲートボールの玉を突く時
何百回、何千回と繰り返してきたことを
大切にする姿
その後ろ姿を何をする訳でもなく
黙ってみていた
みている時間が好きだった
もともとは
女学校の先生をしていたらしいけれど、
多くは語らず背中で語る人だった
おばあちゃんの過ごす
静かな時間は心地良かった
こんな秋の日、
畑の帰りにお堂によってお参りした
あなたと過ごした時の流れを
冷たくなった風に
ふと思い出していた
絵 Atelier hanami@はなの様