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カヤトーストを深掘り 前編。

先月より「屋台祭り・オンライン・イベント」と題して、月に1度、マレーシアの食事情をzoomで配信している。6月はミルクティー「テタレ teh tarik」、7月はトーストの軽食「カヤトースト kaya toast」だった。

このワンテーマ型のイベントがとっても楽しい!

作り方、ルーツ、いつ、どのようなときに食べるのか、地域や民族による味の好みの違いはあるのか。

そんな複数の視点で探っていくと、それがたとえ1杯のドリンクや手軽な軽食であったとしても、マレーシアの食文化、食習慣、つまり、人々のスピリットの部分に触れることができるから。

カヤトーストも興味深さ満点だったのでまとめておこう。※長くなったので前編、後編にわけます。


1 ■カヤトーストって何?

カヤジャムとバターをサンドしたトーストのこと。カヤジャムとは、ココナッツミルク、卵、砂糖で作るスプレッドで、香りづけにパンダンの葉。ゆでたての枝豆のような香りがする甘いカスタードのような味。

この甘いカヤに、バターの塩気をあわせて、甘いとしょっぱいを同時に味わうのが、カヤトーストの醍醐味。ちなみにマレーシアでは、バターではなくプランターとよぶマーガリンを使うことが多い。

朝食の定番で、おやつにも食べる。こちらはジョホール州でおやつに食べたカヤトーストす(見た目はもちろん同じ)。

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なぜ、トーストがおやつなのかというのは、項目5に考察。


2 ■カヤジャムの基本は2種類

作り方は、ココナッツミルク、卵、砂糖、パンダンの葉をボウルに入れ、卵がだまにならないように弱火の湯煎でじっくり加熱。だいたい75℃前後を保ち、好みの濃度になるまでかき混ぜ続ければできあがり。レシピはこちら。

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もしだまになったら、ミキサーでうぃ~んとまわしてもよし。でも「ミキサーにくっつくのでもったいないけどね」とは、マレーシア人シェフのチャーさん談。

「カヤ Kaya」とは、マレー語で、富裕、お金もち、という意味。つまり、カヤジャム=高級なジャム。どなたがつけたのかはわからないけど、ナイスネーミング!

カヤジャムは、オリジナルとパンダンの2種の味がある。オリジナルは、上記のレシピにキャラメルソースを加えて深みのある甘さに。一方、パンダンは香り重視。パンダンの葉のしぼり汁を加えて、枝豆っぽい自然なほっこりとする香りをたたせる。パンダンのしぼり汁が抹茶のような緑色なので、色は淡いグリーン。

さらに、こんな手作りカヤジャムも!

チャーさんのおばあちゃんは、約6キロのカヤジャムを炭火でことこと手作りしていたそうだ。材料は全卵ではなく、黄身のみを使用。そのため舌触りまったり、濃厚な味わいで高級感満点! なお現在「マレーアジアンクイジーン渋谷店」で販売しているのは、この卵黄のみのチャーさんの思い出の味(写真左がオリジナル、右は数量限定の黒糖版)。

マレーシア在住のラジブさんは、ドリアンの季節になると、ドリアン・カヤジャムを作る。全体の量の1/3ぐらいをドリアンにするそうで、想像するに、かなりドリアン。こちらも季節限定の特別版。

また、お隣のシンガポールでは、変わり種カヤジャムが市販品として登場。「チョコレート味、コーヒー味、グリーンティー味などが店で売ってますよ」と、在星マレーシア人のハニサさんが教えてくれた。

ちなみに、ご存じの方も多いと思うけど、カヤトーストはシンガポールでもよく食べられている。先月、東京・新宿に「ヤクン・カヤトースト」の店がオープンし、われらマレーシア好きも大感激! リピーター続出です。


3 ■トーストは薄切りでカリッ

カヤトーストの食パンは薄切りが多く、カリッと焼いてある。

毎朝カヤトーストを食べている“カヤおじさん”さんによると「日本で作る場合は、10枚切りを1枚トーストし、それを半分にするのがベストです。一度焼くと外側が固くなるので、真ん中のふわっとしている部分に包丁がすっと入っていって切りやすいですよ」と研究結果を教えてくれた。

また、トーストは炭火で炙るのが伝統的な作り方。現在も炭火焼きのトーストを提供している店はある。こちらは国際空港KLIA 2近くにある「チューンホテル」の朝食風景。

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サラワク州で立ち寄ったホーカーセンターでは、トースターで1枚ずつ焼いてくれた。これはこれで、店のおばちゃんの家に遊びにいったみたいで楽しい。

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また「家にはトースターがなかったので、パンは焼かなかった。そのままカヤジャムとプランターを塗って食べていました」とチャーさん。

もしかしたら、食パンを焼く、ということが、外食の醍醐味であり、プロの味、という位置づけだったのかも。また、パンはモチッではなくカリッとした食感のほうがカヤトースト向き、といわれるが、そもそもマレーシアに、モチッとしたパンがなかった、というのも理由にある気がする。


4 ■カヤトーストに必須の2つの味

マレーシア人はカヤトーストに「コピ kopi」と半熟卵(2個)を合わせることが多い。このセットを「マレーシア版モーニング」とよぶ人もいる。こちらはペナン人のリムさんの定番の朝ごはん。

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コピとは地元産のコーヒー。ネルドリップでいれる深みのある味が特徴で、苦みや酸味はひかえめ。焙煎のときにマーガリンを加えることが多く、香りがよく、コーヒーの表面をよくみると、艶つやしている。コンデンスミルク入りなので、甘い(だいたいコップの下にたまっている)。

半熟卵は、しょうゆと白胡椒で味つけし、黄身をつぶして、カヤトーストをからめながら食べる。……と思っていたら、チャーさんとミーくん(マレーシア料理店のスタッフ)はカヤトーストに浸さず、別々に食べるそうで、個人の好みらしい。

卵入りのカヤジャムと半熟卵は相性抜群! これに、ほのかに苦みのあるコピがまた合うのだ。

後編に続く。

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