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『冥府のハデスさん 第0話』短編オトシンワ(オーディオドラマ)脚本

「耳で聴いて心で感じる」オトシネマは、音の映画をコンセプトに、様々な音声作品をSpotify等の音声プラットフォームにて配信しております。

こちらのオトシネマ作品集【脚本アーカイブ】では、配信されている作品を文章の形でご紹介させて頂きます。

耳の不自由な方、聴くのが難しい環境の方も、是非こちらからオトシネマコンテンツをお楽しみ頂けましたら幸いです。

冥府のハデスさん

『冥府のハデスさん』~第0話~


登場人物
■ハデスさん(ギリシアの神ゼウスの兄)
■出雲鳥神(日本神話政策委員)
■ケルベロス(ハデスの飼い犬)

あらすじ

日本の天界から、神話制作の教えを請う為にやってきた出雲鳥神。
ゼウスから教わるつもりが、代わりにと現れたのは兄のハデスだった。
ハデスから神話作りのヒントをもらうことになったのだが、
出雲とハデスのやり取りは愉快そのものだった!
果たして無事に、日本神話を作ることができるのか…!?

(※以下Spotifyリンクよりオーディオドラマのご視聴が可能です。)

ハデスとの出会い

はるか遠い昔の話…。

(古代を感じさせる太鼓の音楽が流れ始める🎵)

出雲鳥神「ここがギリシアの神々達が住むオリュンポスか…。」

出雲鳥神(ナレーション:以下NA)【私はここ、ギリシアから遠く離れた国、日本の天界からやってきた日本神話制作課制作部の出雲鳥神(イズモトリノカミ)。今回ここにやってきた理由は、ギリシアに住む神に日本独自の神話を作る為教えを乞うためだ。】

出雲鳥神「すごいなぁ…、日本の景色とは大違いだ…。」
出雲鳥神「しかし、ギリシアのゼウスって神もいい加減だなぁ。今日会って話してくれるって言ってたのに、当日になったらやっぱり無理って…どんな神様だよ。」

(ここから『ジャン、ジャジャン…』と怪しげな音楽が流れ始める。)

出雲鳥神(NA)【ギリシアの最高神ゼウス。全知全能と呼ばれている彼だが、色々と変な噂も聴いている。天界から地上を覗いては気に入った女性を攫ったり…。実際のところわからないが、今回のドタキャンがそうでないことを祈る。】

出雲鳥神「えーっと、代わりに会ってくれる神様の場所は、っと…このあたりのはずなんだけど…。」

出雲鳥神(NA)【ゼウスが代わりに自分の兄を紹介すると言ってくれたので、頂いた地図を頼りに歩いていると、先ほどまで煌びやかだったオリュンポスの景色とは打って変わり、どんよりとした空気の場所を彷徨っていた。】

出雲鳥神「ほんとにここなんだろうか…。あのゼウスとかいう神様、適当な事言って逃げたんじゃ…。」
ハデス 「おぉ!お主か!? お主が弟のゼウスが言っていた出雲とかいうやつか!?😄✨」

出雲鳥神(NA)【その時、背後からこの場に似つかわしくない、もしくは空気が読めないとでも言おうか、明るすぎるくらい明るい子どもの声が聞こえた。 後ろを振り返ると、小さな子どもが満面の笑みで立っていた。】

出雲鳥神「あ・・・・え?🤨」
ハデス 「いやぁ、待っておったぞ! 弟のゼウスから聞いておるぞ!  なんだか遠い国からはるばるやってきたのじゃろ?」
出雲鳥神「え?じゃあ貴方がゼウスさんが言ってた…代わりの神様……?」
ハデス 「そうじゃ、そうじゃ!我が名はハデス。よろしく頼むぞ、旅の者よ!😄✨」

(ここで華やかなトランペットの音色が流れる🎵)
OP【冥府のハデスさん。~第0話 ハデスさんと日本神話~】

ハデスの冥府案内

(ハイテンポなラテン音楽が流れ始める🎵)

ハデス 「どうじゃ? 冥府も意外といいところじゃろ!」
出雲鳥神(NA)【そう言いながらハデスは楽しそうに冥府を案内してくれる。】
出雲鳥神「そ、そうですね…。なんだか賑やか?ですし。」
ハデス 「じゃろ? 死者のうめき声がなんとも言えんハーモニィを奏でてくれとるんじゃ!」
出雲鳥神(NA)【いや、やばいよそれ。】 と、サクッとしたツッコミが飛ぶ。
出雲鳥神「あはは…😅 それであの、ハデスさんはこの冥府を統括されてもう長いんですか?」
ハデス 「ううん!全然!😄」
出雲鳥神「そうですかー・・・😑」

(ここからは、リズミカルな打楽器の音楽が流れ始める🎵)

出雲鳥神(NA)【やられた…!あのゼウスとかいう糞に適当な人材つけられた…!😠💢 こんなんじゃ神話作りにならないよ…。下手したら今日一日子守りさせられて終わるんじゃ・・・。】
出雲はそう言って、怒りで声を荒ぶらせている。
ハデス「さて、そろそろ我の部屋に到着するぞ!」

(『ドンドコドコ』と迫力のある太鼓の音色に音楽が変わる🥁🎶)

出雲鳥神(NA)【そう言って目の前に現れた部屋の扉は、どうやって開けるのかわからないほど大きくどっしりとかまえられていた。】
ハデス「ひらけーゴマー!ドーーン!!」

(『ドーーン!』とドアが勢いよく開く音が響いた💥)

出雲鳥神「あっ、そんな感じで開くんだ…😯」
ハデス 「さぁさぁ!入って入って!遠慮するでない!」
出雲鳥神「では、失礼いたします。」

神話のご相談

ハデス 「さて早速なんじゃが、お主ここに何しに来たんじゃ?😯」
出雲鳥神「あ!それもゼウスさん説明してくれてないんですね!!😫」
ハデス「なーんもきいてない。」
出雲は『ううんっ。』と咳払いをしてから話し始めた。
出雲鳥神「では、改めて説明させていただきますとですね・・・。」

(古代を感じさせる民族楽器調の音楽が流れ始める🎵)

出雲鳥神「現在、私の日本という国ではここ、オリュンポスの神々のような神や英雄、神話という物が無いに等しい状態です。
そこで世界的にも有名なここギリシアの神に、神話制作の助言、及び援助を受けにやってまいりました。」
ハデス 「はぇ~、それはまた大きなプロジェクトだねぇ~。具体的には何に困っているのさ?」

(ここから、リズミカルなビートミュージックが聴こえ始める🎵)

出雲鳥神(NA)【あれ?この人見た目こんなだけど案外話が通じるのかもしれない・・・!🤔】
出雲鳥神「実は一番困っているのは、英雄の神話についてなんですよ。」
ハデス 「あ~、ヘラクレス君みたいな?」
出雲鳥神「そのヘラクレスさんの事は存じ上げませんが、多分その認識で合っていると思います。」
ハデス 「そうだなぁー・・。英雄の名前は?」
出雲鳥神「スサノオという男が候補に挙がっています。」
ハデス 「あ、じゃあ英雄は決まっておるのか。いなかったらギリシア人派遣してやろうと思ったんだがのッ!😁」
出雲鳥神「ギリシアの人がこっちに来たら、日本神話がギリシアに侵略されるじゃないですかぁ~。」
出雲鳥神(NA)【…教えは、乞うのだけどね。】

ハデス 「それじゃあれか、怪物に困っておるのじゃな?」
出雲鳥神「そうなんです!まさしくそれです!! 色んな怪物を上司に作っては提案、作っては提案したんですが、グスッ・・どれも却下で・・・😢」
ハデス 「それは可哀相に・・・まぁ安心せい、ここの冥府には色んな怪物がおるからな。お勧めの奴らをピックアップして貸し出してやろう。」
出雲鳥神「本当ですか!?ありがとうございます!」
出雲鳥神(NA)【なんだよ、ゼウスさん!ちゃんとした人紹介してくれたじゃん!よかったぁ…!😆】と、安心した出雲はテンション高く喜んでいる✨

ハデス 「そうじゃなぁ・・・」
(『パラパラ』と紙をめくる音が聴こえる。)
ハデス 「あ、こいつはどうじゃ? パンドラって女子がいるんじゃが。」
出雲鳥神「女性ですか・・・?一体どんな方でしょうか?」

(ここから、暗くて不気味な音楽が流れ始める。)

ハデス 「絶対開けたら駄目って言われる箱を平気で開けるやべぇ女子じゃ。」
出雲鳥神「地味!!😫」
ハデス 「待て待て!開けるだけじゃ地味じゃが、その開けた箱からこの世のありとあらゆる病を箱から放出するんじゃぞ? 洒落にならんぞ!?」
出雲鳥神「確かにやばいですけど、それでどうやって英雄を英雄たらしめるエピソードにするんですか?」
ハデス 「その病を完全に治す名医になる話にすればよかろう?」
出雲鳥神「そういう英雄の話ではないんですよね!もっとこう・・偉大な!?😣💦」
ハデス 「十分偉大ではないか。」
出雲鳥神「そう…なんですけど。こうもっと怪物自体を倒すような!目に見えない物じゃなくて!」
ハデス 「あー、そういうやつかぁ~。」
出雲鳥神「はい、そういうやつでお願いします。」
ハデス 「パンドラの奴、世界を恐怖に陥れてやるって息まいてたが、当分先になりそうじゃな~🙂」
のんきに凄まじいことを口にしているハデスに、またもビシッとツッコミが飛んでいく。
出雲鳥神(NA)【出来ればそのパンドラって奴ごと箱の中に入れておいてくれ!!😫】

ハデスの珍獣紹介

ハデス 「じゃあこいつはどうじゃ? 我のペットでケルベロスっていうんじゃが。」
出雲鳥神「おぉ!なんだか強そうな名前ですね!どんなペットなんですか?」
ハデス 「頭が3つに分かれてる犬なんじゃが。」
出雲鳥神「気持ちわる!😨 じゃなくて犬は駄目です!」
ハデス 「今、気持ち悪って言ったのか!?😠」
出雲鳥神「つ、つい・・・すいません…じゃなくて犬は駄目なんです!」
ハデス 「なぜじゃ!?」
出雲鳥神「犬が好きなんです!😤」ハッキリと言い切った出雲。
ハデス 「知らんわー! 個人の主義ではないか!」
出雲鳥神「だとしても犬は駄目です!可哀相です。」
ハデス 「はぁ・・・😮‍💨 なぜお主の案が上の者に通らぬかわかった気がするわい。」

(どんよりとしたギターの音楽が流れ始める🎶)

出雲鳥神(NA)【そう言って深く溜息をついたハデスは、不機嫌な顔で黙り込んでしまった。】
出雲鳥神「す、すいません・・・。でも犬猫は地上の人間達と共存関係にあるので、イメージを悪くするわけには…。
ですから、もうインパクト重視で!誰も見たことないような大きくて、強いやつ!これで行きましょう!いやっ、これでお願いします!」
ハデス 「うーむ。大きくて強いやつか・・・🤔 あぁ!それなら心当たりあるわい。」
出雲鳥神「ほんとですか?!」

(ここからは、ノリの良いギターの音楽が聴こえてくる🎵)

ハデス 「あのヘラクレス君でも手こずった怪物がおってな、ヒュドラっていうんじゃが。」
出雲鳥神「それはどんな怪物ですか?」
ハデス 「あれは気持ち悪いぞぉ~😁  首が沢山あってな、切っても切っても生えたりするんじゃ!種族は水蛇じゃ。」
出雲鳥神「めちゃくちゃいいですね!それ!😆✨  そのヒュドラっていう個体を少しの間日本に連れて行っても構いませんか?」
ハデス 「構わんが、名前とか設定はどうするんじゃ? 同じにしたらそれはそれでやばいぞ?」
出雲鳥神「流石にそのまま流用しないですよ! ちゃんと名前変えて・・・それから水蛇っていうのを龍に変えたりすれば・・・。」
その話を聞くと、ハデスはケラケラと大笑いし始めた。
ハデス 「あははは!!なんじゃそれ?ヒュドラびっくりするぞ!『え?龍になるんすか自分』・・・って!あははは!😆」
出雲鳥神「そんなに笑わないでくださいよ! まぁ細かいことはまた考えます。いやぁしかし、流石はギリシアだ。日本にはそんな怪物の発想ありませんよ。これからのこと考えただけでもぞくぞくしますねぇ✨」

ケルベロス登場

ハデス 「まぁ喜んでもらえて何よりじゃ!どれ、さっそく連れて帰るかの?」
出雲鳥神「そうですね!上司にも早く報告しておきたいので今からでもよろしいですか?」
ハデス 「それじゃあヒュドラのもとに向かうとするかの!とその前に。」
出雲鳥神「どうされましたか?」
ハデス 「いや、ケルベロスに餌をやる時間でな!ちょっと待ってくれるかの?」
出雲鳥神「あぁ、例のワンちゃんですか。」
ハデス 「ワンちゃんじゃない!ケルベロスじゃ!😠💢」
出雲鳥神「あ、すいません。」
ハデス 「高貴な生き物なんじゃぞ!敬え!!😠」
出雲鳥神「そんなに怒らなくても。」
ハデス 「まぁ良いわ。 おーい!餌の時間じゃぞ!ケルベロスー!😄」

出雲鳥神(NA)【ハデスがそう呼ぶとどこからやってきたのか、柴犬の子どもサイズの頭が3つに分かれた狼が小走りで尻尾を振ってやってきた。】

(『ワンワン♪』と犬の鳴き声の入ったかわいい音楽が流れ始める🎵)

出雲鳥神「ちっさ・・・!」
ハデス 「やめんか!😠  ケルベロスは小さいと言われるのが一番傷つくんじゃぞ!  ほれ見てみぃ!拗ねよったわ!」
出雲鳥神「あぁ、ごめんなさい! かっこいい!たくましい!でかーい!」
ハデス 「心込めて言わんか!」

出雲鳥神(NA)【こうして、僕の日本神話制作の旅は無事終了し、レンタルで連れ帰ったヒュドラを社内でプレゼンし、見事採用が決まった。
名前はヒュドラからヤマタノオロチに変更し、様々な設定をこれでもかと追加した結果、日本で一番有名な神話の一つになったのは…また別の話。
ヒュドラは終始困っていたが、見事役目を果たし無事故郷のギリシアに帰っていった。さぁ、まだ別の仕事も残ってるし、頑張っていくか!!】

ハデスとケルベロス

ハデス「・・・お主は小さくないぞ。」
ハデスは、優しい声でそう語り掛ける。
ケルベロス「くぅ~ん💧」
ハデス「我もまだまだ成長段階じゃ・・・。」
ケルベロス「・・・」
ハデス「なぜ黙るのじゃ。」
ケルベロス「くぅ~ん……。」
ハデス「よし! こういう時は散歩じゃ!散歩に行くぞ!」
ケルベロス「わんわん!✨」
ハデス「はは!可愛いやつめ! よぉ~し、冥府の入口まで競争じゃ!😆」

《 おしまい 》

作品制作キャスト・スタッフ

■出雲鳥神・ハデスさん・ケルベロス:近藤知史
■脚本・音楽:片山大輔
■プロデュース:松本大樹

■脚本編集/記事掲載:ニーナ
■イラスト:TATASUMIRE

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