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読書感想 クメールの瞳

ネタバレ大いにありの読書感想です。

タイトル  クメールの瞳
作者    斎藤詠
出版社   講談社

会社員をしながら、野生の鳥の写真家になりたい北斗に恩師樫野教授から、預けたいものあると電話がかかってくる。だが、その後、教授は事故死し預けたいものが何だったかわからない。葬儀で教授の娘夕子、友人栗原、研究者エルザに事情を話し教授の部屋を探すと、メキシコのおまもりと謎の数字が書かれた缶を見つける。
フランス統治時代のコーチシナ、幕末の日本、ベトナム戦争時のクメール、第二次大戦前の日本、そして現在を行き来しながら物語は進む。映像的で読みやすい風景描写で、様々に場所は変われど複雑さはなく、読みやすい。
遺跡で見つけられたクメールのペンダント「カーラの瞳」、遠くをそして未来を見ることが出来るといわれるこの遺物が教授の遺したものだった。そして、その遺物は、日本軍やアメリカ軍によって密かに探されているものだった。北斗の家が荒らされたり、夕子が父の友人塩屋に見張られていたり、不審な事が起こる。教授の死は、事故ではなく殺人だと確信する北斗。
様々なヒントを元に山奥の金庫にたどり着き、謎の数字で開けることが出来たが中は空だった。
ミステリなので、敵のように思えた人が味方だったり、仲間が敵だったりするが、ラスボスは民間軍事会社の社長。東京ミッドタウンの地下で映画さながらのアクションが繰り返される。
「カーラの瞳」はどうなるのか?北斗と夕子の関係は?
これは読んでのお楽しみだが、スムーズに読み進められるミステリだった。

ミステリのわりに人が死なない。残酷なストーリーの苦手な方にはおすすめかな。その分、どこか物足りなさも感じるミステリだった。また、軍事会社が必死に欲しがるほどの力を「カーラの瞳」が持っているようにも思えなかったところが、マイナス点かな?

自分の未来は自分で切り開くものだ。
教授が娘夕子に残した思いは、そんな当たり前のやさしさだった。



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