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読書感想文 中山七里 おわかれはモーツァルト

クラシック音楽、好きなんです。
といってもさほど詳しくはないのですが。
宝塚ファンしていると自然にクラシックに触れて、その心地よさに引き寄せられるってところがあります。
めちゃめちゃかっこいいリストがミラーボールの下でピアノをひけば、モーツァルトがロックを奏でるそんな世界が宝塚ですからね。

若い頃は、大阪のシンフォニーホールとか京都コンサートホールなんかにクラシックを聞きに行くっていう行為自体が、なんだか高尚で、自分がお利口になったような気がして、嬉しいっていう時期もありました。
まあ、そんな程度のクラシックファンですが、10年くらい前の佐村河内守氏の事件には驚愕しましたね。NHKスペシャルに感動し、楽曲も購入していたので当時ショックは大きかったです。

今回読んだのは、そんな事件を思い出させるようなクラシック業界を巻き込んだミステリーです。


ネタバレ、あらすじありの読書感想文です。

あらすじ

ショパンコンクール入賞で注目を浴びた全盲のピアニスト隆平。
隆平は、母由布花、マネージャーTOM、指導者潮田のサポートのおかげでピアニストとして活躍することができていると思っていた。
全曲モーツァルトで構成された全国ツアーが始まる為、新聞や雑誌のインタビューを受ける隆平だが、記者によっては答えた真意とは別の記事を載せる者もいて、苛立つこともある。
そんな時、インタビューに来た寺下というライターが、隆平の全盲が嘘ではないかと言い出す。怒ってインタビューを中止にするが、寺下のガセネタはネットにも流された上、コンサート会場でヤジを飛ばされる。
寺下はガセネタで恐喝する悪徳ライターだった。
由布花、TOM、潮田は、それぞれに寺下をなんとかしなければいけないと考えていた。

そんな時、隆平の練習室で寺下の遺体が発見される。
警察は、隆平を犯人だと疑っている。
隆平はショパンコンクールで出会ったピアニスト岬洋介にアドバイスを求める。

日本に戻っていた岬は、隆平の為に動くことにした。
岬は鋭い観察眼で、真犯人をあぶりだす。
真犯人はいったい誰だったのか?

感想

先日、読書感想文の書き方講座的なnoteのイベントを視聴して、おお!私も読書感想文を記事っぽくするぞ!と一日目は意気込んで書いてはみたのですけれど、やっぱ、私にはうんちくのある文章や、ほおっと思える記事は書けそうにもなく、元の書き方に戻ってしまいました。
わずか、一日。
三日坊主にもならない、意志薄弱さ。
ま、備忘録であることにかわりはないので、うんちくも生き方のヒントもない私の感じたままの感想を書くことにしました。

まあ、書店のPOP風のイラストとアマゾンのリンクっていうのは、続けてみよう。
素人の書くさほど読者のいない人間が、アマゾンのリンクを貼って小遣い稼ぎになるものなのか?っていう疑問を以前から持っていたのでちょっと実験です。

さて、「おわかれはモーツァルト」は「さよならドビュッシー」のシリーズ最新作ですね。
作中に、弁護士御子柴シリーズの御子柴の名前も出てきて刑事がびびるというシーンもあり、中山作品好きはニヤリとする感じです。

なんといっても、隆平が練習するときの心理状態や、コンサートで演奏をする描写が素晴らしいです。
私は、クラシックに詳しくないので、描かれている表現全てを理解できるわけではないです。でも、クラシックに詳しい人に説明してもらいながら演奏を聞いているような気分になります。
知っている曲なら、曲を聞いているような気持ちになります。
知らない曲も、聞きたくなりますね。
才能ある芸術家の感覚や悩み、障がいを持つ人の心情など、様々な感情が描かれていて、それがとてもリアルに感じられてさすがだたと思いました。

佐村河内守氏の事件をヒントにしているような事件が、隆平をフェイクニュースに巻き込むきっかけになっているという流れが自然に思えて「世間を騒がす誰かのつく嘘」がまるで関係のない人を巻き込む恐ろしさを感じました。どんなことも、悪意を持って解釈すればフェイクがリアルに誤解され、SNSに流される。根拠なく信じた人のプライドは、フェイクと気づいたとしても自分がバカだと認めたくなければ訂正されない。
悪意を持つ個人と自分に甘い大衆が同じ方向を見てしまう恐ろしさはとてもリアルです。
隆平の存在は清らかで、彼を助けたいと考える人間や、庇いたいと思う人間の「愛」を感じると、人間って捨てたもんじゃないなって安心できます。

ただ、ミステリーとしては、いまいちかな。
私がかなり早い段階から予想した犯人が、最終的にドンピシャに当たってしまったので、どんでん返しを楽しむことができませんでしたね。
まあ、犯人がなぜジャケットを持ち逃げしたのかという理由までは思いつかなかったけれど、それ以外は「当たり!」だったので、意外性がありませんでした。
ミステリーとしては、単純すぎたかなと思います。

でも、ミステリー以外の部分で充分楽しめます。
才能あふれる芸術家同士の友情とか、母の愛情とか、仕事仲間の絆とか、SNSの不確かさと、世間一般の人々の残酷さとか、そんな様々な人々の感情と、音楽シーンの描写だけで充分面白かったです。

音楽ミステリーシリーズ、読みやすくて楽しいですね。


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