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天使が下した決断は? 知念実希人 死神と天使の円舞曲

人はいくつになっても学ぶことができる。

還暦過ぎたおばちゃんとしては日々そう思って生きるように心がけています。久々に、刺激的な学びがありました。

昨日の夜、ふとnoteを見ていたら、「只今イベント中」みたいな案内が上部に出ていたんですね。クリックしてみたら、書評家三宅香帆さんによる
「”好き”を伝える文章講座」ってのをやってたんです。

綺麗なお嬢さんがね、言葉を選びながら「好き」を伝える文章の書き方を解説しておられて、これは勉強になると思って見始めました。
そしたら
「さききわ」の「デュエダン」の記事が出てきて!!!
おばちゃん変な声を出しましたよ。
おお、三宅さんヅカオタだ!
素晴らしい。それも、コロナになってから? 
まあ、ご新規さん、ようこそ夢の世界へ。

ヅカオタってだけで、もう家族みたいなもんですからね。
がぜん、聞く姿勢が変わります。
ジェンヌさんのように背筋を伸ばし、姿勢を正してお話を聞くわけです。
そしたら、読書感想文の添削をなさいましてね。

目からうろこ……
そうか、備忘録のつもりで読書感想文を書き続けていたけれど、誰かに伝える「記事」として書いた方が面白いではないか。
そっか……「こんな本を読みました。あらすじはこうで、感想はこうです」って記事を書き続けていた私の読書感想文をがらっと変えてみようかな。

この読書感想文の添削は勉強になりました。書いておられる方の記事や、良い点悪い点も、すべての話が参考になって、早速今日から読書感想文の形式を変更するってことにしました。

ということで、ヅカオタの言葉には素直に従い、影響される単純なおばちゃんが紹介する本はこちら

おばちゃんでもPOPが作れた!

https://amzn.to/3D5wP7m

ネコちゃん、ワンちゃん、大好きな方は読んでみて。
登場人物の黒猫のクロとゴールデンレトリーバーのレオンの二人(二匹?)の大活躍がとても可愛くて、生意気で、おかしいです。
クロなんて、パソコンを駆使して情報を手に入れ、地域の猫をやっつけてボスになってしまう。そんなスーパー猫ちゃんのくせに、おしゃしみ(お刺身)大好き。レオンもしゅうくりいむに目がないワンちゃんです。美味しい食べ物に負けるのは人もペットも同じ。人間界で生きるペットへの愛と風刺を感じます。

人間がペットを飼っているのか?
飼われているペットが人間を観察しているのか? 
リアルですよね。現実にペットの奴隷と化している方、何人か存じ上げておりますもの。そして、ペットたちはその奴隷を観察しつつ愛しているのだろうな。ペット側の目線から見る人間の姿も面白いです。

そして、作者が知念実希人さん。医師ならではの専門的な医学の知識が駆使されていて、「へええ」が随所にでてきます。

以下、ネタバレあります。

この世に未練を残し死んだ人間が地縛霊とならないように、遣わされた二人の天使。この世の生き物に身を変えた二人の天使が黒猫のクロとゴールデンレトリーバーのレオン。

放火事件の頻発する街。山では、人魂がでると言う。
そんな時、山で自殺しようとする青年大河を救ったクロ。
ホスピスで働くレオンは、入院患者美穂の魂を救おうとしていた。
大河と美穂は、かつて愛し合った仲だった。

一人前になって戻ってくると約束した大河。
戻ってきた時、美穂は結婚し子供もいた。
一体なぜ?
そして、美穂の病の原因は大河にあるのか?

二人の悲しいラブストーリー。
相手を想うがゆえにする努力。
相手を想うがゆえにつく嘘。
人の思い込みと誤解に追い詰められる美穂。
人の思いをお金の為に利用しようとする人間。

そんな人間の悪しき心を利用しようとする「天使」が現れる。
その「天使」が実行しようとする恐ろしい計画。

それに気づいたクロとレオンはそれを阻止できるのか?

シリーズもので、七年ぶりの新作ですが、前作を読んでいなくても全然大丈夫です。

ラブストーリーとミステリーとが一体化していますが、天使や死神が登場するのだから、ファンタジーですね。

天使や死神って、人間よりも偉い存在なのでしょうか?
クロは自分のことを高位のスピリチュアルな存在であるとして、人間を見下しているようにも見えます。
まあ、相手が天使であろうが、神であろうが、誰かに「見下された」って感じると不快になりますよね。
だから「人を見下す」っていう感情は愚かで醜いものだと思うのです。
でも、人が集まった時、無意識のうちに自分の位置を探ってしまうことってありませんか?
マウントとられたって感じたり、ああ、私の方が幸せだって感じたり、理性とは別に心で感じてしまうわけです。
「自分の方が上だ」なんて感じること自体卑しい感情だと思うものの、感じてしまったのは自分の心であって、それは事実なわけです。そして、その感情は隠そうとしても空気を振動させて相手に伝わっているかもしれません。
だから、あとから誰かを不快にさせていたかもしれないってことに気づいて、自己嫌悪に陥ったりします。
でもね、年齢を重ねると、過去の経験から学んで感情を手なずけるようになってくるものです。私は自分の中にあるそういう感情を「人間臭くて可愛いじゃない」って思うことで自分を甘やかしてやります。

小説を読んでいて面白いのは、正しい人間だけに共感するわけじゃなく、悪い人間に共感している自分の闇の部分に気づくことがあることです。
この物語では地縛霊になるような人間の魂などいちいち救ってやるものかと思う天使が出てきます。人間を見下し、自分の仕事を効率的に済ませてしまおうとする天使がやろうとしていることは……
それは恐ろしく、許されないことだけど「人間なんて馬鹿な生き物いなくなってもいいかもよ」って思う黒い自分もどこかにいるのです。
でも、それに対峙したクロとレオンの自己犠牲の愛に目が覚めました。
そしてクロとレオンの選ぶ道は、愚かで弱い人間という存在を愛しているから選ぶ道。そんな優しい終わり方に、ほっとさせられました。

人間って愚かだけど、かわいい生き物だから、クロとレオンも一緒に生きてくれるんだねって優しい気持ちにさせられます。

知念作品としては医学知識が少なめですが、愛の物語として軽く読むにはお勧めの一冊です。

#読書の秋2022 #死神と天使の円舞曲


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