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読書感想文 菰野江名 つぎはぐ、さんかく

小説教室に通ってから、文章を書くことが好きになりました。

小説教室に通っていた頃、何度も新人賞に応募されている生徒さんが質問しました。課題として提出なさった、300枚くらいの作品について、
「なかなか一次に残らないのですけれど、これなら、一次に残りますか?」
小説教室の先生はおっしゃいました。
「これくらい書けていたら、一次には通りそうだけれど、まあ、正直、新人賞って運みたいなものも大きいですからね」
それを聞いて「じゃあ、運がよけりゃ、一次に通るのかもよ」ってなことを考えた私の浅はかさ。
昨年、先生には「読みやすくて面白いですよ」と言っていただいた作品を見直して、とある新人賞に応募してみました。

撃沈。もちろん、一次にすらひっかかりません。
そっか、「運」が悪かったのかもね。
いやいや、違います。

なんらかの新人賞受賞作品を読んでみれば、「運」ではなく面白さで選ばれているって、簡単にわかります。
こちらは、第十一回ポプラ社小説新人賞受賞作品です。
ポプラ社さんは、ほのぼのとした優しい小説が多く出版しておられる印象があります。だから、こちらの作品もとてもほのぼのしています。

さすが、受賞作って感心してしまいます。

あらすじ、ネタバレありの読書感想文です。

ランチも出すお惣菜屋さん「△」を営むのは、晴太とヒロの兄妹。
二人の下には中学三年生の弟、蒼がいる。
三人は、一緒に暮らしており親はいないようだ。
ヒロたちは、以前住んでいた家の近くの小料理屋の優子に世話になり、料理も優子から教わった。
「△」での利益は、三人が暮らしていくのにはぎりぎりだが、三人は仲良く暮らしており、店には常連さんもついていた。

この作品のお店「△」では、マヨネーズから手造りするポテトサラダとか、鮭のムニエルとか、チキンのマスタード風味とか、麻婆豆腐とか、竜田揚げとか、おでんとか、とにかく色々美味しそうなお料理が出されます。
こんなお店が近くにあったら毎日ランチを食べに行っちゃうなあって、常連のお客が羨ましくなるようなお店が舞台です。
晴太が豆からひいていれるコーヒーも最高に良い香りがしそう。

料理のでてくる小説は、お腹がすいてしまいます。

でも、この三兄弟、普通の兄弟ではありません。
蒼が中学を卒業したら寮のある学校へ進んで家から出ると言い出したことから、ヒロは動揺します。
なぜ、ヒロは動揺したのか?
晴太、ヒロ、蒼の三人の関係はどういうものなのか?

少しづつ秘密が明らかになっていきます。
三人に、血のつながりはありません。
それでもこの三人は家族で、「△」が三人の帰る場所なのか?
三人の思いはそれぞれ、微妙に違います。
そして、血のつながりのある人間との関係も無視することはできません。

母親に置き去りにされた哀しみを抱えながらも、生きることに懸命だったヒロが、ゆっくりと一歩一歩前に進んで手に入れた家族の姿は、一般的な家族の姿とは違うものです。
でも、羨ましくなるほど穏やかで、優しくて、未来がある。
そんな、姿に元気がもらえました。

とても、読みやすくて、ほっこりできる作品でした。

やはり、プロの編集者たちが沢山の作品の中から選びぬいた作品は、違いますね。

小説教室の先生が言ったことで、絶対に正しいと思うこと
「とにかく、読みなさい、書きなさい」
確かに、読むことは様々な点で学びになりますね。
そして読書を楽しみ、刺激を受けて、書くことができれば、私も一歩前に進めるような気がしました。

最近読むばかりで書いていなかったけれど、やっぱり何か書こうかなって思います。
前に進みたくなる、そんな作品でした。

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