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読書感想文 真梨幸子 さっちゃんは、なぜ死んだのか?

毎回勝負作を書いているはずなのに編集者には評価されない。
そんなスランプに陥った作家の元に叔父から電話がかかってくる。
「さっちゃんが死んだよ」
さっちゃんは作家の叔母。なぜ、叔母は死んだのか?
作家の好奇心がむくむくと頭をもたげる。
そんな冒頭から、一気に引き込まれます。

ネタバレ、あらすじありの読書感想文です。

カフェに現れてパソコンで仕事をするふりをする女、公賀沙知はホームレスだ。そんな、沙知が公園で殺された。
カフェ店員の祐子は、自分の部屋の前の借主が沙知であることに気づき、沙知に興味を持ち、沙知のことを調べ始めた。
広告代理店で働いていた沙知は様々な理由で転落していたのだ。祐子がそれをブログに書くとブログが広く認知され始め、記者の高橋が興味を持ち始めた。沙知を殺したと自首したのは、西岡政夫。
高橋は、西岡が沙知を殺したいきさつを取材し、記事にした。
だが、高橋の元上司板野は偶然西岡と自分に関わりがあることに気づく。板野の記者魂に火がついて調べ始めると意外な事実がわかる。
真犯人は他にいる……

さっちゃんは、なぜ死んだのか?

すごくテンポよく物語は進んでいくので、スルスル読めます。
沙知の転落の人生は、あまりにも悲しい。
高橋は公賀沙知を自分に重ね合わせる。誰にとっても、沙知は自分自身かもしれないと思えるほど、普通の人間なのだ。
沙知だけではない。
祐子も、記者の高橋も、西岡も、板野も、他の登場人物も。
だれもが、どこにでもいそうな普通の人たち。
でも、それぞれに承認欲求をもち、それぞれの環境でもがいている。
きっと、皆、普通ではなく、特別でありたかったのだ。

どんな人の心の中にある自分に都合の良い嘘。
上手い話なんか世の中に転がっているはずはないのに、飛びついてしまう愚かさを持つ人間。
信仰心や動物愛護など、一途な思いで周りが見えなくなる人間の感情。

様々な人間の、様々な思いを感じることができて、面白かったです。

ところで、さっちゃんって……

え? どういう意味?

それは、読んでのお楽しみ……

なかなか、面白かったです。



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