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"それでも大丈夫"

VLIVEが2022年12月31日でサービスを終了する事が公式にアナウンスされた。

私が推しているfromis_9はHYBE傘下のグループなのでVLIVEでアーカイブされていた配信動画は既にWeverseに移管済。とは言え一部何らかの事情で移管されていない動画があったので、その動画が見れなくなってしまう前に一度ここで書き記しておきたいと思いこうやって筆を執っている。

その動画というのがfromis_9が主演のWEBドラマ『Welcome to Heal Inn』、そしてそのSeason2となる『WE SEE WINTER』だ。

『Welcome to Heal Inn(でも大丈夫、回復会)』はオフィシャルの情報では、ノジソンが主人公を務めるウェブドラマとの事(そうだったんだ)。ノジソンが主人を務めるゲストハウスを舞台に、そのゲストハウスを訪れた他のメンバー演じるゲストの悩みをノジソン(とイソヨン)がノジソンお得意の料理でヒーリングしていくというコンセプトのドラマでプロローグとエピローグを合わせて全6話の構成。ゲストが抱える悩みに合った食材を選び、その食材をどう料理するかでゲストの悩みをノジソンがゆっくり解いていく。何ともノジソンが主人公らしいドラマである。また本作はタイミング的にギュリがProduce48に参加していた時期に制作されていて、このドラマにギュリは不在となっている。

実は私自身このドラマを観た気になっていて実はちゃんと観ておらず、約二か月ほど前にしっかり履修させて貰ったのだがめちゃくちゃ良かった。推しているグループという贔屓目無しでWEBドラマとして、映像作品としてめちゃくちゃに良い。1話約10分という忙しい現代社会においてアクセスしやすいコンパクトなサイズになっているのに加え、撮影も編集も脚本もしっかりしていてドラマとして本当にしっかりした作りになっているし、ルックも良いし、良いショットも多く映像的にも満足できる出来。

また色々な事情を抱えこのゲストハウスを訪れるメンバー演じるゲスト達が抱えている悩みや事情が、実際の本人達のバックグラウンドに触れている所もファンとしてグッとくる部分でもあり、とにかくファンであれば絶対に観ておくことをお勧めする内容になっている。個人的に特にグッと来たのはセロムとジホンがゲストの第2話での2人のやりとり。セロムからの「嫌いなものってある?」という問いに「虫やおばけが嫌い」と答えるジホン。それに対して「私は失敗する事が嫌い」と答えるセロム。このセロムの「失敗する事が嫌い」という答えに色々なものがこみ上げてきてしまって泣きそうになってしまったシーンだが、こういうファンならではの見所が随所にある。

しかしファンであれば楽しめないのかと言えば否である。このドラマで語られるのは誰しもが心に抱えているような普遍的な悩みであって、誰しも共感できるような普遍的な物語が描かれていると思う。何より映像と語り口がとても良いのでドラマとして誰でも楽しめる間口の広い作品になっていると思う。

立ち止まる事すら許されない加速し続ける現代社会においての心のシェルターとしての『Welcome to Heal Inn(でも大丈夫、回復会)』、嫌な事があった時の逃避として、疲れて帰ってきた時の休息として、次に進む為のモラトリアムとして。立ち止まって、休んで、考えて、振り返って、少し戻って。あらゆる事が許され、誰にでも開かれているこのゲストハウスを舞台に繰り広げられる「回復」の物語は、全ての人にとって、今もこれからも必要なものなのではないかと思う。最終話である「EPILOUGE」、このドラマの締めとなるジソンの"それでも大丈夫と言ってあげたい"という言葉は、これを観たそれぞれが必要するタイミングでそれぞれの心を救うのではないだろうか。

この良作が、VLIVEの終了と共に観れなくなってしまうのは大変惜しい。(現状でWeverseに移管されていないので権利上の関係で移管は難しいのではと思う)

という事で下記にてまとめてリンクを貼っておくので時間がある時に是非観て頂きたい。何度も言うが、1話約10分とても観やすいサイズになっている。(話によっては日本語字幕の表示タイミングが著しくズレているものがあるのでそこに関しては頑張って下さい)

EP0. 『PROLOUGE』ジソン

EP1.「I Wish It Were So(そうだったらいいな)」ジウォン&チェヨン

EP2. 「Need Those Days(そんな日が必要)」セロム&ジホン

EP3. 「What Time(どんな時間)」ハヨン&ソヨン

EP4. 「Longing Heart(懐かしい心)」ナギョン

EP5. 『EPILOUGE』ジソン


そして『Welcome to Heal Inn』のSeason2として公開された『WE SEE WINTER』。

こちらは「ノジソンが主人公で料理を作る」という主軸は前作から引き継ぎつつも、fromis_9のメンバーがfromis_9のメンバー本人として出演するという建付けで(もしくは実名のままたはだの9人の友人同士として)、例えばチャンネル9等でメンバーがわちゃわちゃしている様子をドラマ的な語り口で語り直したような内容。かつ本作『WE SEE WINTER』では実際のfromis_9としてのグループの物語がメインテーマとして描かれているので、前作に比べかなりファン寄りな内容になっている。

『WE SEE WINTER』は前作のように章立てにはなっておらず、一つのエピソードが前後半に分かれていて、それぞれ約20分の合計40分というボリューム。それに8分のエピローグが付随しているといった構成になっている。


本作では「9人の幸せ」、そして「9人がいつまでも一緒にいる事の約束」が主な主題として描かれている。「幸せ」と「約束」は初期のfromis_9にとっての2大テーマのようなモチーフだが、それがこうやってメンバー同士の微笑ましい会話ややり取りの中で改めて語り直されると非常にグッとくるものがあるし、ギュリが脱退し8人なった今のfromis_9と一人違う道を歩み始めたギュリの事を思うと込み上げてくる彼女達への想いはひとしおである。

また本作では「9人でいる事の約束」を永遠のものにする装置として"写真"が効果的に使われていて、この語り口はfromis_9の最新EP『from our Mement Box』と非常に距離が近いものとも感じる。本作の終盤で描かれる"メンバー全員で線香花火をする"行為、そしてその姿を写真に収める行為は、一瞬で散ってしまう線香花火のメタファーとしての「今この瞬間」を永遠のものにしたいという祈りであって、この祈りはまさに「Stay This Way」で語られていた祈りそのものではないだろうかとも感じる。彼女達は何処かで気付いている、この時間が線香花火のように一瞬のものである事を。だからこそ何よりも大切である事を。

みなみに「Stay This Way」のレビューは下記にて


それにしても本作品『Welcome to Heal Inn(でも大丈夫、回復会)』の副題でもある”それでも大丈夫”という言葉の汎用性と、この言葉の機能のさせ方をシーズン1とシーズン2で変えて語っている所には改めて唸らされた。シーズン1では人を癒す言葉として、シーズン2では人の信じる心を強くする言葉として。何よりこの"でも大丈夫"という言葉を投げかけているのがノジソンという所がとても良い。

VLIVEサービス終了まであと約2か月。どんな形でも良いので残り続けて欲しい作品。何度も言いますが、本当に良い作品なので是非観て下さい。


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