吸音仕上げギャラリー(4)
この冬、スキーに行ったときのことです。
休憩しようと入ったホテルのブッフェは、2層分の天井高さのある大きな空間でした。ゲレンデに向いたブッフェの3面は天井までガラスの大きな開口で、スキーヤーの動きや風景がよく見えます。
天井が高く、しかも大きなガラス面を持つ空間は、音が響きやすく喧噪感が高くなりがちですが、ここはそんなことはなく、落ち着いて食事や会話を楽しむことができました。
どこかに、吸音の工夫があるはずです!
探してみたら、ありました。
ガラス開口の反対側、キッチンカウンターの上の壁です。白く見えているのは、ロックウール化粧吸音板のストライプリブタイプです。リブの縦横を変えながら、大きな壁面いっぱいに使っています。
ロックウール化粧吸音板は安価で施工しやすく、よく天井に使われる吸音材です。多孔質材、つまり板の中にたくさんの連続する孔があり、この孔に音のエネルギーが吸収される仕組みです。表面にはこの孔がトラバーチン状の模様となって見えています。
この構造ゆえに残念ながら外力には弱く、指で強く押すとつぶれてしまいます。そのため、人やものがぶつかることが少ない天井に使われます。
壁の高い位置であれば、人やものがぶつかることはない。
このブッフェは、こう考えてロックウール化粧吸音板を壁に使ったのだと思います。うまいですね!
ストライプリブタイプを使っているのも、デザインに効果的です。ストライプのリブが見せる影が平面にリズムを生みます。
ロックウール化粧吸音板のトラバーチン状模様を「虫食い模様」と呼び嫌う方もいますが、目の遠い位置に設けたリブタイプは、リブの影が勝ちこの模様が目立ちにくくなります。さらにここでは、一定面積ごとに格子状に縦横づかいを変えています。影の方向によって見え方に変化が生まれ、広い面積なのに単調に見えません。
おいしい料理とともに吸音の工夫にも触れて、満足のいく休憩になりました!
(志賀高原プリンスホテル西館 レストラン ウェストサイド)
https://www.princehotels.co.jp/shiga/restaurant/westside/
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