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【映画】『枯れ葉』_または『コーヒー&シガレッツ』について


― 今日は映画についてです。

昔から映画ばかり観ています。高校では思春期のウヤムヤを誤魔化そうと、またはただの暇つぶしとして阿呆みたいに映画を観ておりました。

別に面白味のある独特なマニアックな方向へはいかなかったので、特殊に語れることはないのですが、観てきた監督を思い付いた順に並べてみます。

ジム・ジャームッシュ、ウディ・アレン、コーエン兄弟、ウェス・アンダーソン、ウォン・カーウァイ、クエンティン・タランティーノ、アキ・カウリスマキ、ヴィム・ベンダース、スパイク・リー、エミール・クストリッツァ、ミシェル・ゴンドリー、ポール・トーマス・アンダーソン、ヴィンセント・ギャロ、ジャン=リュック・ゴダール、小津安二郎、黒澤明、宮崎駿、北野武

Favorite Film Director

今年は年始に京都烏丸の京都シネマでアキ・カウリスマキの新作『枯葉』を観て、もう2024年の今年の一位が決まってしまったと思いながら劇場を後にしました。観た方はわかる方もおられるでしょうけど、最高でしたね。あと、当日小さいとはいえ京都シネマが満杯だったのが嬉しかったです。京都の文化値の高さを感じると共に、劇場の一体感のようなものが久々に感じられた時間でした(ラストの犬の名前と二人の姿。。)。

アキ・カウリスマキ監督作品『枯葉』

文字が少ないので、ここは『枯葉』繋がりで大好きなジム・ジャームッシュ監督作品「Coffee and Cigarettes(コーヒー&シガレッツ)」のことを書いてみたいと思います。

この映画はタイトルにあるコーヒーを飲みながら煙草を吸う人たちの日常のある場面の会話劇が11の作品からなるオムニバス映画です。なんでもない会話がユーモラスで人間の滑稽さや情けなさなど人の魅力がじんわりと伝わり、何回でも観ることができる映画になっています。付け足すなら、そこに流れる音楽や映像はとにかくカッコいいのですが、それが嫌味な感じもまったくないです。

注目すべき点は、一般の映画では俳優はその役柄の仮面を被る訳ですが、ジャームッシュは俳優のその人のキャラも活かしてしまう、その俳優だからこその面白みを演出するのが実にうまいです。また、前のジャームッシュ作品に出ていた俳優をその要素も活かして演出したりもします(でた!ジャームッシュ印!といった塩梅)。

ジム・ジャームッシュ監督作品

俳優が出てきたら、観客はその俳優の特徴や過去の作品や“素”に近いメディアのキャラクターを瞬間的に想像するものだと思います。そしてその彼や彼女がこの役を演じているのだと思考が落ち着く訳です。でも、この作品の俳優たちは、その俳優のキャラクター込みの役柄(ほぼ本人)になっているので、こちら側はいつもの彼らが演技という形を取って話しているのだという親近感を持つことができます。それがこの作品の根底にある「穏やかさ」と「ユーモア」です。普通の映画にある気遣い的な“想像の遮断(これはいつもの俳優が「役」を演じているのだぞ)”をさせないような「優しさ」があるのです。

この映画は“素”のような演技で一場面を描くのだが、あちらで大御所的な立ち位置となるミュージシャンも登場します。それがイギー・ポップトム・ウェイツだ(彼らはジャームッシュの過去の作品に関わっている)。二人で場末のパブのようなとこで天然で実のない話をしゃべっている。これは、確かに彼らのバックグラウンドを知っているとより楽しめるかもしれなません。でもなんか有名なミュージシャンのおじさんが話しているのだろうな、というだけの認識で十分に楽しめるとも思います

日本でいうと、(亡くなられてしまったけれど)内田裕也さんと憂歌団の木村充揮さんがおとぼけな話をしているような感じでしょうか。もうすこし若くすると甲本ヒロトさんと田島貴男さん(オリジナルラブ)という感じでしょうか。どちらもわくわくするように思うのですが、そんな組み合わせだけでテンションが上がるのだが、この映画の会話は本人が言うから「可笑しい」という台詞をグダグダな感じで言うのでついつい観ている側はニタニタしてしまうのです。

日本に「Peeping Life」というよくできたアニメーションの会話だけの一場面で展開するものがあるが、あの構図はすこしこの映画に近いように思います。これ以上書いても内容に触れることになるので、あとは「観て欲しいな」というのと「はじめてこの映画を観れるなんて羨ましいな!」と思いながらおわりにします。

ジム・ジャームッシュの作品は、少しの想像力を試されるような感じはします。それは同時に肩の力を抜き、フラットな目線を持っていることが大切だということを教えてくれているのです(多分)。

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