読書メモ 池田喬          「存在と時間」を解き明かす  

第1部 存在と時間の基本

1.現存在とは

存在について、人は漠然とは、知っているが、
存在を明確に説明をする事は難しい。
「どのように存在しているか」を問う事が
出来る存在が現存在である。
それが出来るのは人間だけである。
しかし、現存在がどのように存在を
問う事が出来るのかは、
安易に、類型的に決めてはいけない。

→平均的、日常的な存在として、決める事も

 本来的に決める事、どちらも出来るのだ

 あり方を決める事を本人が出来るという点に

 おいては、作業療法に通じるのでは。


2.実存主義との違い

サルトルは、現実存在(実際のあり方)が
存在の本質に先立つという主張をしたが、
ハイデガーは、そのような立場を取らない。
→現実的な存在が非本来的である場合もあり、
どのような現実存在であるかを考える必要がある。
あるいは、気遣いという認識レベルの方が
先行をすると考えたのかもしれない。
ハイデガーにとっての中心は、現存在が、
「自分自身の存在が常に気がかりであるし、
配慮しなければならない」という事である。
理想的な現実存在よりも、
平均的な日常性(日常的に自分の存在をどうとらえているか)
から始める。
存在の意味は自分の可能性(出来ること)と関連づけて理解される。

→人は、自分がどのような存在であるかは、いつも考えている(気遣い)。

→自分が理想的な存在であるときもあれば、そうでないときもある。


3.言葉と真理

言葉とは、理性、判断ではなく、「見えるようにさせる」はたらきがある。
アレーティアは今までの訳し方の「真理」でなく、「隠れなくさせる事」である。
一般定立とは、凡庸な受け止め方、エポケーにより、それを止める。

4.
形式的告知とは、無拘束で、多様な記述の可能性を開くことである。
存在とは、形式である。
具体的なイメージになって、実体化されてしまうことを避ける。
現存在の視点に、神や物理学の視点を入れない。
→人間を「神や物理学の視点」からとらえない。

被投的

→主体的に、自分で決定しうる存在ではない。その限界を知っている。
自己固有性(ownness)とは、本来性とも訳されるが、
崇高なものではなく、全てを自分でコントロールする事ではない。
権利もあるが、義務、責任もある。
→ひととして、卑下するような事ではなく、具体的、義務責任に落とし込む?


第2部 存在と時間の前半

1.環境世界 
日常的に慣れ親しんでいる世界。人と世界の二元論的世界ではない。

存在者を何かのために存在する道具的な存在として見る。

道具的連関 全ての道具は目的のネットワークでつながっている。

1つだけで存在しているわけではない。

私が世界に意味を与えるわけではない。すでに意味は与えられている。
→世界の側は、人が意味を与える対象ではない。構造主義的と言っても良いかもしれない。
存在論的 存在者が有意味に存在することができる文脈。
存在は道具でありながら、自然的な存在でもある。
世界とは、物の総体ではなく、存在者が現れる領域である。
私は常に何らかの気分である(情態性)
2.世人(Das Man)
一般的な人(世人)を想定している。
「自分が標準的な人とどれくらい異なるか」が基準になる。


第3部 存在と時間の後半

1死への先駆★

 死へと向き合う事を先駆と呼ぶ。
死の事を考える事で、固有な実存の可能性(その人なりの生き方)が開かれる。
現実化しない死の事を想像する事ではない。
特定の偶然の死ではない。必然的な死の領域である。
いつか必ず終わりがある。
世界の中にいる能力がある事は、
「世界からいなくなる能力がある」という事である。
死への恐れは、特定の事を恐れるのではなく、
漠然としたものを恐れる不安に近い。
→終わりがない、限りなくやれると思う事で優先順位はつかなくなる。
明日、死ぬかもしれない。その時に私は何をやるべきなのか。


2倫理的とは

ハイデガーの考える倫理とは、行為の良し悪しを考える事ではない。
適切な居場所を問う事である。

生きている限り、何らかの責任をとらなくてはいけない。

自分は何ができるのか、どのような責任がとれるのかを認識する事によって、
人間の道徳が明らかになる。他人の現存在を欠如させることに責任が生じる。
現存在は、自分が望んでいないのに、この世界に投げ込まれてしまった。
非力な存在である。だから、他人に欠如を生じさせてしまう。


3存在と時間★

実存とは、「今、ここに何が存在する」という現前性ではなく、
自分はどのように存在しうるのか、
可能性から、自己の存在を理解する事である。


先駆

自分の固有性(自分らしさ)を理解する事である。

取り戻し

過去を位置付ける事である。
今後のキャリアに影響の強い過去も、そうでない過去もある。
予期とは、逆に非自己的な理解、手許の道具をどう使うかとか、
目の前の事にどう対処するかに意識が集中している状態である。
→人間は、目の前の事に対処する事、ルーチンワークに集中して、
こなしてしまいがちである。しかし、今後したい事を考えて向き合う事が大事である。

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