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新地から引越し

2017年から約3年半住んだこの生活も明日で終わり。

日曜日には、今住んでいる生野区の今里新地から市外へ引っ越します。
コロナ禍前の目が眩むネオン街や異国情緒の日々が懐かしいです。

酔っ払いの喧嘩が盛り上がりポリ出動⇒巻き込み食らった仲裁人も含め乱闘⇒応援まで駆けつけしっちゃかめっちゃかな金晩土晩のミッドナイト騒動や、

謎の音漏れダンスホール(?)、火事、モデルや女優の写真を勝手にのせたデリヘルチラシのポスト投函、不在時に知らない人がうちに沢山訪ねて来る(Twitterオフ会の会場に指定されてたみたい)、などなどドラマティックなことが山ほど起こった面白い日々でした。

ここが「新地」の中心部だと知ったのは越してきた二日後で、飛田や吉原くらいしか知らない20代前半女性としては衝撃的でした。初めての一人暮らしにしてはなかなかパンチの効いた体験だったように思います。

今里への関心を強く持ったきっかけは、加藤政洋氏の著書「大阪」という本からでした。

大阪の土地開発や時代背景をエリアごとに紐解いていく内容で、その中に今里新地に関する章がありました。

主に土地の成り立ちや変遷を語るものでしたが、売春防止法や近郊開発型の花街に関する記述は、今まさに住んでいる番地の歴史なこともあり凄まじいリアリティがありました。

これを書くまで忘れていたけれど、中で紹介されていた梁石日「今里新地」もぜひ読みたいです。こちらは生野区出身の作家とのことで、引越し準備リストを作っていた時に市民だよりで見つけました。

そして、昨日「はみライpodcast」で聴いた在日朝鮮人3世の方の体験話。

「コリアンタウンには焼肉店や韓国料理店、パチンコが多いけれど、その理由や背景がある。もっと知ってほしい」とおっしゃっていたのが印象的でした。

それからツイッターで目にした遊郭に関するトピック。(これは鬼滅の刃で題材になっているのかな?) 遊郭はこんなにひどいところだった、差別以外の何物でもなかった、と遊女の待遇関連の情報が流れてくるたび苦しくなります。さあ引越し!となったこのタイミングでなぜかこの土地への興味が強まっています。もっとフィールドワークするべきだったな、あと1年興味を持つのが早ければなんて今更考えます。

遊郭といえば高校生くらいの頃、蜷川実花監督の「さくらん」の世界観に憧れている時期がありました。
美しくて艶っぽくて可憐で強くて奔放で煌びやかで…私にないものが全て詰まってるように感じられたけれど、知らなかったからこその憧れでもあったなと10年経って思います。

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2019年には、大阪のCCO名村造船所跡地で行われた第六回アラタパンダン展で「Dirty unicorns,Elastic love」というセックスワーカーや性愛をテーマに扱った作品を出しました。

見ての通り量で勝負の作品だったため、制作中はあまりに多量の「負」に飲み込まれてとんでもないことになりました。当時はロスト・マインドがひどく精神的にかなり参っていました。それだけ情熱を持って真剣に向き合っていた証でもありますが。

制作期間は、自分とそれ以外の境界がなくなり辛かったです。他人の苦しみが自分の苦しみのようでした。しかも現在進行形の”新地”という場所に住んでいたこともあって24時間作品のことを考える感覚でした。今でも性産業関連や虐待、蔑視に関する情報には「要覚悟」のラベルを貼り、一定の距離を保っています。

metooや慰安婦問題など、どれも面と向かって取り組むには辛さが伴いますね。オリンピックの森問題を見ていてもますますその気持ちは強まるばかり。真剣に向き合う人ほど辛い意見をたくさん浴びそうです。でも、自分なりに「黙らない」ための練習は続けていこうと思っています。

▼最後に「大阪」で紹介されていた赤線地帯に関する書籍リストをピックアップ
「今里新地」梁石日
「越境する民」杉原達
「さいごの色街 飛田」井上理律子(筑摩書房)
「飛田で生きる 遊郭経営10年、現在、スカウトマンの告白」杉坂圭介(徳間書店)
「飛田新地の人々 関西新地完全ガイド」西本裕隆(鹿砦社)

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