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オセロニアコモンズ または如何にしてスマホゲームのクリエイティブを著作権フリーにしたか

『逆転オセロニア』では、本作の世界観やキャラクターを利用した二次創作の取り組みを、積極的に支援しています。そんな私たちが、どのようにしてクリエイティブの著作権をフリーにしたのか?

その著作権フリーの取り組み「オセロニアコモンズ」にも関係が深い『蒼龍騎士と赤竜騎士の軌跡』(高嶺バシク氏:著 講談社発行)が、先日2020年10月5日(月)に刊行されたことを記念して、記憶をたぐりよせながらつらつらと書かせていただきます。

※「オセロニアコモンズ」とは、『逆転オセロニア』の著作物の利用に関するクリエイターの創作活動を支援・推奨するためのガイドラインです。

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みなさま、はじめまして。
『逆転オセロニア』運営チームで、ブランディング担当をしている「かじさん」です。よろしくおねがいします。

ブランディングといってもイメージが付きにくいものだと思います。『逆転オセロニア』におけるブランドの方向性の示唆は、けいじぇいPがガッツリやってくれますので、基本的にはその推進のお手伝いをしています。お手伝いをしながらけいじぇいPに、世の中的に面白いニュース記事等を送りつけるというのも大切な仕事です(仕事のじゃまをしているわけではなく刺激を与えているのです)。

あとは、みなさんの目に触れる様々なものが捻れて伝わらないかをチェックする門番みたいなお仕事もしています。

1.スタートは突然に

2019年2月中旬、オセロニアチーム会でけいじぇいPからのプレゼンテーションがありました。今後のオセロニアの方針をシェアすることで、目標・目的意識を統一し運営チームの進むべき方向を指し示すプロデューサーとしての大切なお仕事です。

その中で発表されたのが「オセロニアコモンズ」(以下、コモンズ)として発表されることになる施策。オセロニアの様々なクリエイティブをライセンスフリーで使えるようにしたいというものでした。

▼実際の発表で使用したスライド

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おーこれは、「オセロニアンの祭典 3rd Anniversary」で発表されてたあれだーと思って聴いていました。

そして、チーム会終了後。
部屋から出るときに、あの爽やかな笑顔で云われたのです。

けいじぇい「これ、やってほしいんだ。
かじ「あっ、はい。なんとなくそう思ってました(笑)」

ということで、推進担当として任命されたのでした。

これだけ読むと、なんか丸投げされた感がありますが、全くそうではなくきっちりと足場は固まっていて、具体化してすぐにでも発表するために専念してほしいということでした。

ブランディング担当としては、この「もやっとした」ものを具体化していくというのは、最も楽しんでやれる仕事なのでむしろウェルカムです。

2.法律の専門家でないのにできるの?

さて、どこから手を付ければいいのか……と普通なら法律の専門家でもない僕は悩むはずですが、そこはぬかりないけいじぇいPの差配にて、法務担当とガッツリ組んでやれる体制を整えてありました。

そうなると、理想形をまとめることを優先すればいいので、意外とやれるものです。

なので、拠り所となる考え方を最初に決めました。

▼当時の企画書より

企画書

1. オセロニアンの皆さんには、以前から、#オセロニアートなど自由に楽しんでいただいている。これを尊重して、ある意味「グレー」なものを「ホワイト」にしたい。

2. ルールとして発表することで、今までの自由がなくなることは絶対にダメ。

3. 著作権をフリーにすることと、著作権を放棄することは違う。ブランディング担当として『逆転オセロニア』の不利益になることはNG。

悩みどころは、2と3です。書面化することにより「記載されている事はOKだが、記載されていないことはNGである。」と捉えられてしまうのです。

「著作権フリーなんで、自由につかってください~。
代わりに責任も持ちません!」

ってやってしまえば簡単ですが事業として行っている以上、そんなことはできません。二次創作されたキャラクターが独り歩きして、全然違う使われ方をしたとき、悲しむのは運営チームだけではありません。オセロニアのキャラクターを好きでいてくれるオセロニアンの皆さんにも迷惑をかけてしまうことになるからです。

「できうるかぎり自由にしたいが、ルールとしてまとめなければならない。」という縛りが、二律背反だなぁと思いつつ少しずつまとめて行きました。

どんな施策にも先達はいるもので「クリエイティブ・コモンズ ※1 」の考え方はとても参考になりました。この頃から施策の名前も「オセロニアコモンズ」と呼ばれるようになります。

同人活動のルールも参考になりました。コミケ ※2 はもちろんなのですが、ワンフェス ※3 の当日版権などもよく考えられた仕組みです(それでも問題点はありますが……)。それらをたどることで、創作活動に積極的なメーカー、ブランドの出しているルールなどにもたどり着き、参考にさせていただいて徐々に形ができてきました。

まとめた文章は、Slack(社内コミュニケーションに利用しているチャットツール)で法務担当に確認してもらえれば、すぐに添削をしてもらえます。自分は専門でなくてもプロが一緒に動いてくれると本当に心強いです。

しかも、本音も共有しているので更にやりやすいのです。

かじ「ほんとは、パーッと全部OKにしたいんだけどねー。」
法務担当「わかりますよー。巧くやります。」

この一体感が、あるかないか……非常に大事です。

(法務の人って生真面目で融通効かないとおもってました。ごめんなさい。)

※1 Creative Commons https://creativecommons.jp/
※2 コミックマーケット https://www.comiket.co.jp/
※3 ワンダーフェスティバル https://wonfes.jp/

3.極力クリエイターの邪魔をしないために

オセロニアコモンズは、キャンペーンなどと違いこちらから仕掛けてアクションを起こしてもらうものではなく、あくまでオセロニアンのみなさんが自発的に行う創作活動を、オセロニア運営として推奨するというスタンスを示すものでもあります。

発表することにより、自由度が下がることだけは避けたいと注意を払いました。そこで、冒頭にこの一文を入れています。

~お客様自身の思想または感情を
創作的に表現した独創性をもつ作品を
制作することを推奨いたします。

「独創性をもつ作品」というのが若干難しいですが、基本的に自由にやっていただいていいという宣言でもあります。

注意事項(禁止事項)は、

~『逆転オセロニア』の社会的な信用、評価
及びイメージを損なうもの

この一言に付きます。オセロニアを好きでいてくれている人が行う創作活動だからあまり心配はしていませんが、規約としては書いておかないと、もし明らかにダメなものを発見したときに指摘することができないので記載しています。具体的に挙げていくと、世の中の動きにあわせて基準がかわることも多々あるので、ふわっとした書き方になっています。ある意味ずるい書き方です(笑)

オセロニアコモンズでの収益化についても細かく記載しました。基本的には、これも自由にやってくださいというスタンスです。動画などは積極的に収益化していただいてOKですし、グッズも作って欲しいです。

ただし、同人活動の範囲内ということで「直接販売」という縛りをいれています。これはコミケなどでとられる方法と同じですね。オセロニアコモンズを知らない人が、オセロニアの商品を勝手に作って売っててずるい!バッタもんや!なんて指摘が入らないように具体的なルールにしました。

ここで気をつけたのが、コピーライトオセロニアコモンズマーク

両方とも『逆転オセロニア』の権利を守るために必要なのですが、えてして記載するスペースがないよーとか、つけたらかっこ悪くなっちゃうよーというのはよくある話……

コピーライトに関しては、この企画のために短縮表記を各所調整のうえ新規に作りました。

【正式表記】
オセロ・Othelloは登録商標です。TM&© Othello,Co. and MegaHouse
© 2016 DeNA Co.,Ltd.

【短縮表記】
©O/MH ©DeNA

とにかく、短くしたかったのです。記載を必要と書いている以上、運用しやすいものを準備しなくちゃという使命感でした。

もうひとつはオセロニアコモンズマーク。これは記載が必須でなく推奨なので、あってもなくてもいいのですが、どうせなら入れたくなるマークにしたいなー。むしろ入ってるとオセロニアコモンズに賛同してる意思表明ができるものにしたいなーということで、デザイナーと相談してつくりました。

▼オセロニアコモンズマーク

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こういう意匠の制作には、こだわりがあるので解説を。

全体的なデザインとしては、オセロニアを知らない人がみても「クリエイティブ・コモンズ」に類する施策であることがわかるように、円とCマークを入れました。

オセロニアを知ってる人が見たらすぐわかるようにということでOのマークを悪魔の口にしています。他施策のロゴもそうなのですが、オセロニアのロを悪魔の口にするだけでグッとらしくなります。

空いた右肩のスペースには、オセロ駒を表す白黒のモチーフを入れて整理。ファイルをsvg(画像フォーマットの一つ)で準備したかったのでできるだけシンプルに。

このマークが記載されているものを発見すると、喜びます。

4.オセロニアコモンズのこれから

実は……特に無いのです。

オセロニア運営が手掛けるキャンペーンは、そもそもオセロニアコモンズにならないという……。

もちろん、「逆転オセロニア小説賞」のようなオセロニアのクリエイティブを使ったいろんなことにチャレンジしたいと思っているのですが!

「オセロニアコモンズ」は、オセロニアンの皆さんにお預けしたものです。

オセロニアート展」は、まさに第2回がこのコロナ禍の状況にあわせてオンライン開催されましたし、オセロニアをきっかけに、YouTuberとしての活動を始めてくれた方もいますし……

『逆転オセロニア』に対する溢れ出すパッションを思う存分、表現していただく邪魔になってなければ「オセロニアコモンズ」の存在価値というのは一定みたされているのかなと!

むしろ、楽しませていただいているのはオセロニア運営チーム側なんで、ほんともっといっぱいいろいろやっちゃってください!!

こんな事してみたいんだけどいいのかな? どこまで自由にやっていいのかな? みたいな質問はいつでも、カスタマーサービス宛にお問い合わせいただければ、すぐに返答させていただきます!気軽にどーぞ(むしろQ&Aの項目に追加するので助かります。)

オセロニアコモンズの使い勝手が悪いという指摘もあれば是非。改定していきます。

ブランディング担当 かじさん

〈次回の配信予定日:2020年10月15日(木)〉

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