外国人が日本に馴染むことがいかに困難か教えてくれる本

読んだ本:鴨川ランナー グレゴリー・ケズナジャット

内容

 日本語に惹かれ、日本語を勉強しはじめた主人公は、数年の学習の後、英語教師として日本で働くこととなる。そこで直面するのは、どれだけ日本語が上達しても日本に溶け込めず、いつまでたっても感じる疎外感であった。

感想

 短いのですぐ読める。二人称の小説が初めてだったので違和感があり、読みづらかった。主人公の一人称が明かされず、最後まで「きみ」で通したのは、外国人である主人公が「私」にも「僕」にも「俺」にもなれず、「I」のままだったからだろうか。
 海外に幻想を抱いてやってきた主人公の幻滅と諦めは、同じく海外に希望を持っている身として納得しながらも落ち込まざるをえなかった。主人公の、自分を個として見てほしいという気持ちが伝わってきた。
 海外に憧れ、英語を使いたがる恋人 百合子が、セックスの際まで英語を使うのはなんだか滑稽だった。日本人であっても心から直接英語が出てくることはあるのだろうか?こんな時まで英語の授業か、と思ってしまう主人公の気持ちに共感した。また日本語を話したいと打ち明けた主人公に英語を押しつける百合子の傲慢さが不快だった。

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