燃え殻さんの「相談の森」は共感の森だった


 タイトル通り、読者からの相談に答えていく形式です。印象に残った回答を備忘録に記します。

 卒業式の日に友達がいないことを寂しく思ってしまったという学生さんに向けて

 あなたはいま、友達が欲しいんですね。いつもはそんなに欲しくなかったんじゃないですか?卒業式の時に周りの楽しそうに名残惜しそうにするグループを目の当たりにして、ふと淋しくなったんだと思います。でもきっとあなたは、日常ではそれほど友達がいなくても大丈夫だったんじゃないですか?自分の好きなように時間が使えて、好きな時に好きなことをするのは誰からも邪魔されることがなくてラクだったんじゃないですか? 
 卒業式の時に楽しそうにしていた人たちは、相手に合わせることだったり、相手に合わせてもらえるように先回りすることだったりの面倒をちゃんと引き受けて、それを当たり前の日常にした人たちです。 お互いがちょっとずつちゃんと人生を共有したからこそ晴れて卒業式を迎えて、その関係性が一旦幕を下ろすことに涙したり、笑って振り返ったりの時間が持てたんだと思います。(略)誰かに頼ったり、頼られたりするのはいいもんです。その関係の先に友達なんて呼べる人ができるのかもしれません。

 確かに、友達と付き合いを続けるのって面倒ですよね。友達は相互努力の結晶だと思います。たまにある一時のために皆労力を割いて関係性を保っているんですね。


恋愛相談について

抜粋箇所のみ。別々の相談です。

 あなたが好きな人を喜ばせたいと思って一生懸命する行為を、苦笑しながら「いいね」って言ってくれる人が現れることを祈っています。そういう気持ちで生きていると出会えることを僕は知っています。 ここだけの話ですが、もっと言えば10年後、20年後に振り返る思い出の大半は、一生懸命相手を想ったそんな気持ちだけだということも僕は知っています。

この文章をSNSで見かけて、買うに至ったのでした。

 それより恋人いない歴10数年のあなたにとって悩むべきことは、彼にとって僕は何なんだ!ではなくて、俺の魅力は何なんだ!あんまりないかもしれない!清潔にするか!仕事もがんばるか!彼に頼るんじゃなくて他を当たろう!や自分でも何とかやってみよう!コリドー街が熱いらしいぞ!相席屋でもいいし、合コン開いてくれる知り合いの知り合いでもいいじゃないか!と思うんですがどうでしょうか。自分の願いが自分のタイミングで叶わなかった時に、相手や社会のせいにしているとモテなそうだと思いませんか。「とりあえず、わかった。 で、どうしようか」ですよ、人生。

 受け身すぎるというか、何も考えず他人に何かしてもらう側にいる人が多い気がします。相談者の方は寄附やら何やらされていたようですが。自分の生活を変えられるのは自分だけ。誰かが変えてくれると思っていてはいけないんですよね。考え、行動するの繰り返しで少しずつアップデートしていくしかない。面倒ですが…。


重い悩みへの返事

解決策とはいかないですけど、自分と同じ境遇、自分とは違う境遇だけど同じような感情を持って生きている人の話や、小説、映画の中に、悶々とした気持ちを言い当てられる瞬間があったりします。自分では言葉にできなかった感情に、ポン と名前をつけてもらえる時があります。中島らもさんの著書 『心が雨漏りする日には』が僕にとってのそれです。 これからの人生、心が雨漏りする日もきっとあります。それをすべて避けることはできないかもしれないけれど、「そんな日もあるよ」と自分に声をかけてあげることを忘れないでください。あなたのモヤモヤにも名前をつけて、特定させて心のどこかにしまっておくのも手です。そうすると「またしまっておいた引き出しからアイツがやってきたか」ぐらいに留められたりしますから。うまく付き合っていくうちに、 その引き出しに鍵をかけられる日が来ることを、 心から願っております。

中島らもさん読んでみます。

 僕には永遠に割り切れない事案があります。理由を端的に言えば、その人がもうこの世にいないからです。彼女はいつも落ちこぼれている僕に、「大丈夫だよ、君は面白いもん」と言ってくれる人でした。 それでも僕は怖じ気づいて、何度も何度も現実からの逃避を繰り返していました。よく巻で囁かれる25歳までに芽が出なかったヤツはおしまいだ、30歳までに転職が決められなかったらおしまいだ、 なんて年を軽々超えた頃に、僕にも小さなチャンスが訪れました。そこまで世の 中の数にも入っていなかった人間が、コツコツあきらめずに続けてこられた理由の一つは、きっとなんの根拠もなく彼女が言い続けてくれた、 「大丈夫だよ、君は面白いもん」という言葉でした。やっと社会の数に入れたよ、最終列車に間に合ったみたいだと彼女に報告しようとした時には、彼女はもうこの世界の狭間にいました。43歳を迎えて、いまでも情けないことに僕は時々、生きることをあきらめそうになる時があります。そんな時に踏み止まることができるのは、もう二度と会えないとわかっているあの人を裏切りたくないという気持ちだったりします。僕はかなりの嘘つきで、 怠け者で、相当エロにもだらしない人間です。 でも自分の中にある、決着のつかない事案を抱えて生きることによって、その重さで飛ばさ れずに一歩、また一歩と今日まで歩いてこられたんだと確信しています。

励まされる1冊でした。

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