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人が轢かれて倒れていたけどスルーした話

仕事終わり、信号待ちをしていた。冬に差し掛かった時分、夕方でも辺りは真っ暗だ。対面から若い女性が歩きスマホを見ながら信号無視をして横断歩道を渡り始めた。おそらくクロスしている側の車用信号機が黄色だったのでもう渡ってもいいと考えたのだろう。そこに黄色信号だからかややスピードを出し気味の車が突っ込んできたので「この女は轢かれるかもな」と思っていたら案の定ぶつかって、1,2m転倒するくらい吹っ飛んでいた。運転手は車内でバタバタしているように見えた。どう考えても女性の自業自得なので、僕は何事もなかったかのように信号が青になったのを確認して横断歩道を渡り、バカだなあと思いつつそのまま帰宅したのであった。

僕は病状的に共感性に乏しかったり、緊急時にもやたら落ち着いている場合がある。決して人命を軽んじることが格好いいと思っている中二病なわけではない、と個人的には考えているのだが果たしてどうだろうか。今回のケースではどのような対応が正しかったのであろうか、とシャワーを浴びながら脳内会議を開催する。繰り返すが一番悪いのは轢かれた女性だ。その次に悪いのは車の運転手だ。僕は何の関係もない単なる目撃者、第三者である(ちなみに他に目撃者がいたかは確認していない)。女性の容態を確認するなり運転手と連携して消防警察に連絡するなりする善意に、仕事終わりである程度疲弊している僕のアフターファイブを削る価値があるか?否、女性が10mくらい吹っ飛んだろ車の下敷きになったら驚嘆の声くらい上げるだろうが、やはり何もせず立ち去っていただろう。

さて、ここに来て何だが、僕は人助けが嫌いではない。むしろ瞬発的な事故には人一倍素早く対応できる自信がある。両手で数え切れないほどの実績もある。では何故先述のような結論に至ったか。答えはシンプルで「仕事帰りだから」である。誰も疲れた身体で一銭の価値にもならないことはしたくないだろう。

結論。仕事は人の命を奪う。

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