見出し画像

敗北宣言

大学に入学して始めて自分のメールアドレスというものを持ち、電子メールを使い始めたのが 1997 年。ああ便利だ。でもこのアドレスって卒業したら使えなくなるよな、という事にはすぐ気づく。なぜならドメイン名 (という呼び名はまだ当時知らなかったけれど) に大学名が含まれているんだもの。

まだまだ国内ではインターネット黎明期と言っていい時代、同じ大学内の人以外では同時期に大学に入って電子メールを使い出した高校時代の友達くらいしか伝える相手はいなかったけれど、いつか使えなくなるアドレスをあまり多くの人に広めるのは躊躇した。当時は、そしてその後ずーーっとしばらくの間、メールアドレスは所属組織や ISP あるいは携帯キャリアに紐付くもので、変わる度に知人に伝えて回るのが当たり前だった。リアル住所じゃないんだよ?電子なのに?あほらしい。

その後、大学の計らいで卒業後も使い続けられるアドレスをもらえると知ったけれど、卒業時点でドメインが変わってしまうという事も知った。それじゃ意味ないじゃん。そこである人曰く、いやいや大学なんかに頼らなくても、電子メール転送サービスというのがあるんですよ。このアドレスを人に教えておけば本当のアドレスが変わった時も転送先を変えるだけで済むんです。だって。はて?そのサービスが終わったらどうなるんです?

程なくして、一生涯使い続けられるメールアドレスを持つには自分でドメインを持つべきだという結論に辿り着く。サーバはレンタルでも何でもいい。ドメインさえ自分で所有しておけば、レンタルサーバサービスが潰れたとしても、別のサービスに乗り換えるだけでメールアドレス自体は変わらないんだから。それが当時も今もハンドルネームとして使っている Otchy で取得した otchy.com。せっかくだから作り始めた「ホームページ」も大学のサーバじゃなくてそっちに置こう。やったぜ。ここが自分のネット上の本当のホーム。WHOIS 見返してみたら 1999 年 11 月だった。人類滅亡を逃れた数ヶ月後にこんなことしてたんだな。

自分のドメインで自分のサイトを持って色々作って公開するのは実に楽しかった。自分のホームでは全ての責任が自分にあるけど全てが自分の思いのままで、何でもできた。2020 年 2 月に 20 年にわたるサイト運営はやめってしまったけれど、Web Comic Ranking も最初は otchy.com 配下で始まってwebcomicranking.com に巣立っていったんだ。

次の転機はブログ。ブログ始めようって思ったのが 2008 年。もちろん独自ドメイン以外の選択肢は無かったんだけど、まっさらなドメインをブログのルートにしたくって、そう、確か最初は blog.otchy.com を検討したんだった。ただ、安いレンタルサーバとそのおまけの DNS では対応しているサブドメインが www しかなかったから、ブログのドメインは新しく otchy.net を取ることに決めた。

当時のブログサービスでも独自ドメインに対応してるものはあったはずだけど、otchy.com の運営で味を占めていたから自分で全てをコントロールしたいと思ったんだな。あともちろん、ブログサービスが終わったらどうなる?ってのは第一に考えた。そこでブログシステム全部自分で書く…ってのも一瞬頭をよぎったけれどさすがに面倒過ぎて追加で借りたサーバに WordPress をインストール。

エコシステムが充実してるってのはとにかく楽で、必要そうなプラグインを追加して、気に入ったテンプレートをダウンロードして、かゆいところに手が届かないのは自分で改造したりプラグイン書いたりで完成。ロングテールなんていう言葉がちょうど流行っていた頃だったか、ニッチでもいい、自分のドメインにしか存在しない記事を増やし続ければ長期的にはドメインの価値が高まると聞いた。

最初の投稿は 2008 年 12 月 23 日で、当時から 2 回はサーバが変わったしデザインも何度変わったか分かんないくらいだけど、今もまだ同じ URL で確認できる。これが独自ドメインの、自分で全てをコントロールするってこと。

ブログには技術系の記事と読み物系の記事が両方あって、時にバズったりしながら 5 年くらいは続けたのかな。でも 2013 年、技術系記事をより多くの人に届けるのに、あとはコードとか載せるのに俄然書きやすく楽だったから、技術系の記事は Qiita に移行してしまった。餅は餅屋というか、技術系記事が otchy.net でバズるの以上の頻度で Qiita 上ではバズってると実感。とはいえ技術系記事を Qiita に移行した後も、読み物系の記事は細々と otchy.net に書き続けていた。

だけれども今日、2020 年。初めてこの note を書いた。

だからこれは敗北宣言。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?