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【想ひ出】 新人だった頃

いくつか職場を変わっている私は、その都度“新人”を経験しました。

その中で、本当の“新人”、すなわち、社会人1年目は今までの人生の中で最も厳しい1年でした。

24歳だった私は、社会の厳しさを肌で感じ、看護師として大きな壁にぶつかり、心も身体もぼろぼろになりました。

『新人指導』といえば聞えは良いですが、実態はハラスメントに近いものがありました。当時の指導係の先輩も大変だったと思いますし、今になって納得することもあり感謝していることもあります。

でも、もっと自分の気持ちをはっきり伝えれば良かったと思っています。

そうすれば、あんなに心身とも病んでしまうことはなかったでしょう。

そんな、社会人1年目のときのことを少し書きたいと思います。


大学卒業後、地元の大学病院のICU勤務になった私。

ICUですから疾患も多岐に渡り、覚えることは山ほどありました。

プリセプター(新人指導係)と一緒に、課題のチェックや振り返り、目標シートの作成を毎日遅くまで残ってやっていました。

午後5時に仕事が終わって、7時に帰られたらラッキー。

8時、9時は当たり前。ちょっと遅くて10時。

夜勤明けも、午前9時に勤務終了後、日勤スタッフがお昼休憩に入ってくるまで振り返り、なんて普通でした。

いつもプリセプターと勤務が同じわけではありません。先輩が勤務だったら、休みでも病棟に行きました。

それ以外にも、チーム会や病棟会、新人対象の勉強会で、休日も夜勤明けでも病棟に来なければいけませんでした。

新人全員がケーススタディを行うことになったときは、3日勤の初日にもかかわらず深夜の1時すぎまで先輩とレポート書きをしたことがありました。

夜勤スタッフが休憩を取れないからと休憩室を追い出されてようやく解放されましたが、「明日、絶対に遅刻するなよ」と言われた時は、さすがにカチンときました。

「絶対に遅刻してやる。」

そう思って目覚ましもセットせず布団に入りましたが、不思議なもので6時には自然と目が覚めてしまいました。

3時間弱の睡眠で目は腫れ上がり、周囲から「大丈夫?」と聞かれ「大丈夫です」と答えたものの、心の中では「全然、大丈夫じゃない…」とふらふらになりながら勤務しました。


秋頃から、明らかに体調に異変を感じるようになりました。

夜、眠ろうとすると先輩に怒られる声が聞こえてくるのです。あまりにうるさくて眠れないので、ラジオや音楽をかけて寝るようになりました。

この時点で、私は気づくべきだったのです。私はおかしい、と。

寝つきも悪く、布団に入ってからもごろごろしながら、いつの間にかようやく眠る。睡眠時間は2〜3時間ほどになっていました。

このような状況でも、当時の私は、自分の頑張りが足りないのだと思っていました。

先輩たちから「他の子は頑張ってるのに、あなたは…」と言われ、なんとか課題をこなさなければいけないという強迫観念に取り憑かれていました。

他の同期のことなんて、今思えば、私には関係ないことなんですよね。

私は私、他の人は他の人。

でも、先輩たちにそう反論できなかった。

反論する気力すら奪われていたように思います。

散々怒られ、罵倒され、他人と比べられ。そうやって、私は洗脳されていったように感じます。

「患者さんのためでしょ」

確かに、その通り。

でも、患者さんの前に、まず自分を労ってあげないといけません。ずっと後になって勤務した病院でカウンセリングを受けた時、「自分にやさしくしてあげないと、患者さんにもやさしくできないよ。」と言われました。

本当にその通りです。人は、自分で自分にできることしか、他人にしてあげることはできません。自分自身を労われない人間に、他人の看護など到底できる話ではないのです。


このままでは、私は壊れていく。

そう危機感を感じた私は、休みの希望を出して旅行に行こうとしました。

ところが、勤務表が出るや先輩から「ここの休みで集中的にケースをやろう」と言われ、もはや何も言う気が起きませんでした。

「私が休み希望出していたこと、知っているよね?予定があるか、聞いてくれてもいいんじゃないの。」

心の中では怒りが渦巻いていましたが、それを言葉に出す力が、私にはもうありませんでした。


12月の終わり、ようやくケースレポートを提出。やっと解放されたと思ったら、今度は新人研修で発表するための練習をするとのこと。

「もう、いい加減にして!!」

そう、叫びたかったです。

休みたくても休めない。仕事に全てを捧げ遅くまで残って働くのが美徳、と言わんばかりの雰囲気。

逃げ出せるものなら、逃げ出したかったです。


ケースレポートの発表会が終わり、帰宅後、真っ先に私がしたこと。まずは、ケースレポートのデータを全て消去。先輩に見てもらうためにプリントアウトしたものは、匿名にしていましたが個人情報なので、フライパンの上で全て燃やしました。


その後、私は患者さんの急変に気づかないという失態を2度もおかし、ようやく精神科を受診し休職しました。


振り返ると、異常な1年だったなぁ、と思います。

これから看護師を目指そうと考えている人、看護師になるために大学で勉強中の人。

自分にやさしくできない人は、患者さんにもやさしくできません。

きつかったら「きつい」と正直に伝えることは、とっても大事ですし悪いことでもなんでもありません。

仕事を休んでも良いです。


患者さんよりも、まずは自分を一番大事にしよう。

これが、私が1年目の経験から得たことです。


他にもいろいろありましたが、今日はこの辺で。

お付き合いいただき、ありがとうございます。

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