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気持ちを切り替える時間

私たち訪問看護師は、個人の家に訪問します。
家から家への移動は、私の在籍したステーションでは自動車を使っていました。

東京で看護を学んだのですが、現在都内で訪問看護をしている同級生は自転車で移動しています。
訪問の移動中に自転車ですれ違って、同級生同士が会話を交わすこともあるそうで、ちょっと羨ましく思います。

ちょっと話しがそれてしまいました。

訪問看護に携わって、病院の看護との違いを一番感じたのは、一人一人の方に向き合える良さです。

病棟では部屋を幾つか持ち、複数人の看護をします。担当する勤務帯に、患者さんの検査や手術、食事などの生活の援助をするのです。

時間は、ケアを中心に過ぎていきます。

一人の方を看ているというより、担当患者さん全体を、この時間はAさんの採血、終わったらBさんの検査、その間にナースコールが鳴って、という感じで時間に追われるのです。

食事がすすまない、眠れない、リハビリに行きたくない患者さん・・・
その後の時間も予定が組まれているので、病院側からしたら由々しき事態です。

そんな時、困るというより「なぜそう思うのかじっくり話を聞いてみたい。できることがあるのなら、方法を変えてみたい」と思ったものでした。


外来勤務の時も、来院した患者さんの重症者を見落とさないことや、待ち時間が長くなっていないかを気にかけて、問い合わせの電話があれば、診療を受ける患者さんを横目でみながら対応していました。

順調に診療が進むように、病院が中心となった看護をしていたのです。


訪問看護は違いました。

個人宅ですから、本人や家族しか目の前にいません。
決まった時間ではありますが、一人に向き合って、その方だけの時間 看護ができます。

共に喜び、共に悲しむ濃い時間です。

色々な感情を共有することは、私にとって理想で大切なことですが、次に訪問する家に住む方には、また別の背景があります。
前の方の想いを引きずることなく伺いたいところです。

そこで、自動車で家に向かう移動時間が、気持ちを切り替えるためには大切な時間になります。

訪問を終えて、駐車場を出た時は、たった今 伺った内容を振り返りますが、移動する10~30分の間に、次の訪問へ気持ちが向いています。

車の中で流れるラジオや音楽が、気持ちの切り替えを手伝ってくれることもありました。
訪問した時の話題提供にもなります。地震や台風、高校野球や相撲など、その時々にラジオで得た情報は特に役に立ちました。

一人一人に向き合うことを助けてくれるのは、移動する時間に気持ちを収めて、切り替えることができるから。

この時間は訪問看護ならではのように思います。


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