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静岡ガストロノミーに感じる3つの違和感

こんにちは、otamaです。

静岡ガストロノミーについてメディアで大きく取り上げられるようになったのは今年に入ってからでしょうか。

もともと、静岡県は日本一深い駿河湾日本一高いの富士山がある場所柄、海と山に囲まれ、土地ならではの食材が豊富な場所でもあります。

わたし自身、グルメ雑誌の取材を行なっていた関係で、県内の料理人の方に静岡の食材についての話もさまざま伺ってきました。

富士宮のFrench Coin(フレンチ コワン)という、県内産の食材をメインに扱うお店に取材で行った時のことです。
シェフが「静岡の豊かな食材を使って作るのは楽しい」とおっしゃっていたのが印象的で、静岡のポテンシャルの高さを再認識した瞬間でもありました。

そのお店以外にも、静岡の食材について言及する場面が数多くあり、その都度静岡の魅力を痛感したのは言うまでもありません。

静岡県では、そういった食材の宝庫である静岡県を見える化させる取り組みとして、2010年より「食の都」という、食に注目したブランディングを行なっています。

それと同時に、地元食材を追求する人たちが現れました。
脚光を浴びている有名どころを挙げるなら、天ぷら「成生」の志村さん、そして、志村さんと一緒に切磋琢磨してきた、焼津の魚屋「サスエ前田魚店」の前田さんです。

静岡ガストロノミーの代表格「成生」と「サスエ前田魚店」

「成生」には、今から11年前、2012年に一度伺ったことがあります。
当時は、今のような30,000円超のコースはなく、8,000円のおまかせコースでいただいたと思います。

当時、「カウンターで提供する天ぷらが食べたい」という父の思い付きで電話をかけたのですが、「次のご予約までのお時間でよければ大丈夫ですよ」と快く受けてくださいました。
すでに他界していた母の誕生日に、帰省中の弟と、父との3人で過ごせたのはいい思い出です。

その時の写真を見返すと、車海老など地元食材ではないものも出ていましたね。当時はまだ、テロワールを意識した料理提供はしていなかったのでしょう。

それでも、食材を扱う技術はすばらしく、当時から注目されるお店であることは間違いありませんでした。
実際に口にすることができたわたし自身も、本当に一つ一つの食材を最高の状態で味わうことができ、心の底から感動したのを覚えています。

そんなお店がガストロノミーを意識して、地元色を全面に打ち出したとなれば、期待は高まります。
地元のテレビ番組で前田さんと志村さんの活躍ぶりを拝見するたびに、心が踊りました。静岡のポテンシャルの高さが証明された気がしたからです。

ガストロノミーとは

ガストロノミーと聞くと、わたしは美食というフレーズが浮かんできます。
この言葉に知識がないのでとんでもなく浅いワードしか出てこないのが恥ずかしいくらいです。

Wikipediaで調べると、下記の通りの説明がありました。

ガストロノミー(仏: gastronomie、英: gastronomy)とは、食事と文化の関係を考察することをいう。料理を中心として、様々な文化的要素で構成される。すなわち、食や食文化に関する総合的学問体系と言うことができ[1]、美術や社会科学、さらにはヒトの消化器系の点から自然科学にも関連がある。

出典:Wikipedia

文化的要素も含まれるガストロノミー。
学問と言われると余計難しく感じます。

言うなれば、風土や習慣で、昔から親しまれてきた調理法で地元食材を味わうことなのでしょうか。
どうしてその食材を食べるのか、どうやって調理するのか。など、料理の背景に思いを馳せることなのでしょうか。

わたしの見解が正しいのなら、わたし自身が地方へ行った際に、その土地のものを食べたいと思って味わうこと自体がガストロノミーなのではないでしょうか。
これは、ごくごく自然な発露だと思っています。

秋田のいぶりがっこはいい例ではないでしょうか。
雪のため室内で大根を干すしかなく、囲炉裏で燻されてできたのが、いぶりがっこと聞きました。環境や風土が作り上げたものと思って間違いないと思います。

静岡県で言ったら、保存のために作られた西伊豆の潮カツオも当てはまります。
ほかにも、加工品ではないですが、由比の桜エビや仁科のイカ、伊豆のシイタケ、下田の地キンメなど、その土地でしか食べられない食材も浮かんできます。
これらは決して高級なものばかりではありません。

静岡ガストロノミーに感じた違和感

1、新しいことなのか

先日、情報サイト「サライ.jp」に静岡の取り組みが紹介されました。

その中の一文にこうありました。

日本再発見の旅が定着しつつある今、旅好き、食好きに注目されているのが、静岡ガストロノミーツーリズムの魅力を体験できる「美味ららら」である。ガストロノミーとは、フランス語で「美食学・美食術」を意味する言葉で、土地の気候風土から生まれた食材や伝統などによって育まれた食文化を体験しながら、各地域を巡る新しい旅のスタイルだ。

出典:サライ.jp『「静岡ガストロノミーツーリズム」を発信する「美味ららら」で“天然の生け簀”浜名湖の独自の食文化を体験』

旅好き、食好きならば、各地の食文化を体験する行為は、すでにやっていることではないでしょうか。
果たして、本当に新しい旅のスタイルなのか。わたしは違和感を感じました。

そもそも静岡県はガストロノミーに対してどんな認識でいるのか、それがわからないことには言えません。

2、目的は明確か

静岡ガストロノミーの目的はなんでしょうか。

静岡ガストロノミーを紹介するサイト「美味ららら」には、なぜこの取り組みをしているのかについての言及がないのです。

キレイなサイトではあるのですが、唐突すぎて、読んでいる人が置いて行かれる印象があります。

県政が行なっていることですから、おそらくインバウンド需要、静岡の観光収益を狙っているのではないかとは思うのです。

これが決して悪い訳ではなくて、非常に大事な視点であると思います。
そして、そんなこと大声で言えないのもわかります。

でも、この取り組みを始めたきっかけが何かは非常に気になりますし、県政としてお金をかけて取り組むことはですから、県民への説明はほしいなと思います。
どうしていきたいのか、イマイチ伝わってこないのです。

3、高級路線しかないのか

静岡のテレビ番組で、静岡ガストロノミーとして取り上げているお店は、「サスエ前田魚店」から魚を仕入れる飲食店がほとんどです。

テレビ以外に、Web媒体である「料理通信」でも取り上げられています。
その中にもある通り、前田さんは「成生」を世界的な店にしたいと奮闘されていたとか。

見据えているのは、世界。
世界の美食家、いわゆるフーディーズと呼ばれる人たちです。

実際、今の「成生」の価格は東京価格です。
地元の人は、簡単においそれとは行けません。

世界に注目をされる、高級店しか静岡ガストロノミーと言えないのでしょうか。

確かに代表格ではあるので、そこを取り上げなければ始まらないのもわかります。
けれど、ほかにも静岡ガストロノミーと謳えるお店はないのかと疑問が浮かぶのです。

この点に関しては、「美味ららら」の4つのツアーで、全く異なるお店を紹介しているのを見ると、高級店ばかりではないことはわかりました。

ただ、一部のメディアは静岡ガストロノミーというと既出のお店ばかりピックアップしている印象を受けます。
もっと幅広い視野で静岡ガストロノミーを紹介し、新しい気づきを与えてほしいと思います。

まとめ

静岡ガストロノミーについて感じる違和感を書きました。
みなさんはどう感じたでしょうか。

変なところに疑問を持つなと思われる方がいらっしゃるでしょうか。

ここでひとつ、はっきりお伝えしておきたいことは、決して静岡ガストロノミーの取り組みを否定したい訳ではないということです。

もしかしたら、わたしは勝手に、県外や国外向けではなく、地元に対しての取り組みを求めているのかもしれません。
注目店以外にも、静岡ガストロノミーと言えるところがないのか、そう言ったところもモヤモヤする部分でもあると思います。

ただただ、静岡ガストロノミーとは何なのか。
それを自分の中で納得できる答えを得たいと思っています。

そのためにも、来週11/1に開催されるフォーラムに参加する予定です。

静岡ガストロノミーとは何なのか。どんな話が出てくるのか。
今から楽しみです。

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