「空気」を利用したボトムアップの統一協会対策などに関する私見(願望&提言)20220825版

岸田首相は、統一協会問題に関心があり、統一協会の問題性を知ろうとする意欲はあることを表明した。入閣の判断材料として統一協会との関係性を公的に表明した首相は初めてである。法務省では省庁横断の統一協会被害救済のための連絡会議が作られた。岸田内閣のこれらの取り組みは大きな一歩である。改造内閣の「身体検査」が不十分に見えるが、自民党と統一協会の半世紀以上の長い関係に鑑みれば、短期間で万全の「身体検査」を行うのは、どう考えても無理である。文春砲やマスコミの集中砲火を受けてボロボロになるのはしょうがないが、公平に見て。半世紀以上の腐れ縁を一回の内閣改造で断ち切るのは無理であり、気の毒だと思う。

私は岸田首相によるトップダウンの動きは重要ではあるが、それだけでは十分ではなく、ボトムアップの取り組みが必要であると考える。岸田内閣が統一協会との決別の姿勢を継続し、統一協会との関係を断たない議員は公認しない、役職につけないなどの統一協会問題への動きをしつこく継続することにより、ボトムアップの統一協会排除の動きが形成されると考えるので、岸田内閣の取り組みを応援したい。

自民党と統一協会の腐れ縁は半世紀以上も続いている。岸田内閣の取り組みは真摯に行っても不十分であることは避けられず、結果的に、統一協会問題についての報道はしつこく続くことであろう。また、安倍元首相の国葬も法的根拠に疑念はあるが、統一協会問題の解決という面では有用である。気の毒な話ではあるが、安倍元首相の死は統一協会問題と密接不可分に関連付けられており、安倍さんの殺人事件が話題になればなるほど、国葬への賛否が議論になればなるほど、統一協会問題に対する社会的な関心は高まり、報道は増えると思う。

これまでの統一協会問題に関する報道をしつこく続けることにより、元信者、信者の親族や二世が声を上げやすくなり、統一協会が日本社会におけるパブリックエネミーであるという事実が確実に広まりつつある。特に、政治家がその親族にも信者がいて困ったという声まで上がるようになっている。報道が継続すればするほど、この傾向は強まり、ますます、多くの統一協会元信者らが声を上げやすくなる筈である。

結果的に、統一協会問題に関する受け手の感度が高まっている状況がボトムアップの統一協会対策に繋がるのではないかと考えている。統一協会や関連団体が新たな信者や収奪対象を求めて社会のあちこちに進出するのを防ぐには、情報発信や情報提供だけでは不十分で、受け手側の感度を上げ、統一協会問題は対岸の価値ではないと知って貰う必要があるが、その素地は幸いにも整いつつある。自治体が統一協会の関連団体との関係を気にしつつある。某大学からの情報によると、大学の教員が講演に呼ばれた団体が統一協会の関連団体ではないかに神経質になっているという。これは非常に良い傾向である。統一協会の関連団体との関係は、対岸の火事ではなく、自治体や教育機関のレピュテーションに影響を及ぼす懸念事項になり、もっと言えば、自治体や教育機関の職員が事業に統一協会や関連団体が絡むと人事面で不利益になるかも知れないという「空気」が形成されつつあるからである。

地方自治体や公的な団体の態度は、民間に、特に公共事業に絡む業種や上場企業にはいち早く伝染する。公共事業の団体は自民党の支持団体だから、地方議員も統一協会や関連団体との関係を意識せざるを得なくなる。選挙に際し、地方議員に頼る国会議員も統一協会問題を意識せざるを得なくなるというドミノの連鎖を起こすことが出来れば、岸田内閣のトップダウンによる統一協会との決別にも実効性が生まれ、被害者救済や対策立法の動きもスムーズに進むのではないだろうか。

他力本願はこの程度にして、反統一協会がこの好機にどう振舞うべきかについての私見を述べる。

1 岸田政権に協力すべきである。

(1-1)自民党以外に政権能力のある政党は日本にない。対立派閥である清和会の方が統一協会の関係が遥かに深いので、岸田首相には、政局的に統一協会問題に取り組むインセンティブがある。

(1-2)野党に協力するのはいいが、自民党抜きで野党に統一協会問題を任せたら、自民党叩きの道具にされて終わり、何の成果も後世に残せない可能性が高い。仮に、自民党を下野に追い込んでも立民単独政権は無理であろう。野党連立政権内では内ゲバが始まるだろうし、参議院の過半数を自民党に握られている以上、早期にレームダックになるのは見えている。野党連合政権が統一協会問題より、ジェンダー、国葬、モリカケなどを優先する可能性もある。

2 被害者の生の声は大きい。市民に自分も統一協会の餌食になり得るという当事者意識を持ってもらうためにも、元信者や二世が声を上げるのをサポートすべきである。重要なのは、統一協会問題に対する関心の高まりの中で、元信者や二世が攻撃に晒されないようにすることである。脱会した元信者や二世が統一協会を離れても、自分の人生を歩んでいる姿を示すことは、未だ統一協会に囚われている信者や二世にとって、脱会に向けた大きな希望となる。元信者や二世の自主的な活動を側面から支援すべきである。

3 統一協会を高齢化による弱体化に追い込むことを念頭に置くべきである。

(3-1)統一協会も高齢化が進んでいる。若い世代が統一協会を離れれば、高齢化により統一協会を確実に衰退(願わくば枯死)させることが出来る。韓国の統一協会指導部は日本人からの搾取と送金への依存を諦めないだろうから、残された高齢の信者の負担が高まり、脱会者が増え、組織を維持できなくなるように働きかけることが現実的な対応だと思う。

(3-2)大学などのおける教育機関におけるカルト対策に協力し、若い人が統一協会の犠牲にならないようにすることと、二世が安心して脱会できる環境を整えることである。二世問題への対処のためには、政治や行政の協力は不可欠になるが、子ども家庭庁、児童相談所、福祉関係者、病院、学校や警察など最前線に立つ公的機関にカルト問題についての知識を身につけ、アップデートして頂く必要があるので、情報提供が重要になる。

(3-3)先に述べた通り、自治体、教育機関、各種団体も統一協会や関連団体と関係を持たないよう敏感にならざるを得ないので、統一協会や関連団体による浸透についての情報提供、情報発信に努め、信者のリクルート(統一協会の場合には新たな資金源、労働力を意味する。)の場を少しずつでもいいから、狭めていくべきである(兵糧攻め)。情報発信に際しては、正体を隠した勧誘が個人の自己決定権を侵害するという違法性は強調しすぎても強調しすぎることはない。被害予防のために必要不可欠であるし、統一協会に対する風当たりが強くなればなるほど、統一協会側は正体を隠した勧誘をせざるを得なくなり、その都度、統一協会を非難する材料が増えていくからである。

3-4)ベストより現状より一歩でもベターを目指すべきである。
3-4-1)反統一協会陣営が依って立つべき理念は人権である。活動に際しては、憲法上の人権との関係で疑念が生じないようにすべきである。そのためには、まず、既存の制度下でも可能な手段を模索し、新規立法についても既存の法令に存在する条文の延長線上(例えば、特定商取引法や景品表示法など)で考えるべきではないか。日本国憲法下では、信仰の内容に踏み込んだり、特定の団体の活動を直接規制する立法は無理である。あくまでも、外形的な行為に対する規制に徹するべきである。
3-4ー2)教育機関におけるカルト対策は、非常に重要であるが、教義内容や団体名に踏み込まず、あくまでも勧誘の手口や被害の実態を淡々と分かりやすく説明する方が、人権上の疑念を生じさせないのでベターである。なお、個人的には統一協会レベルになると名指しをしても正当化される余地は十分にあるが、無駄なリスクを犯して、委縮効果を生むよりはマシだと思う。

4 カルト対策立法についての私見

(4-1)少しでも前進するという観点からは、カルトの定義に触れなくても済む方法を選ぶだけである。カルトの定義論争に巻き込まれたら、無限の時間稼ぎをされてしまう。宗教かカルトかという議論も無意味である。如何なる人間の集団もカルトになり得るのである。

(4-2)外形的な行為に着目して規制するフランスの反カルト法的なものが、日本国憲法に抵触しないような形で特定商取引法的なものや景品表示法的なものの延長線上に実現するのがベストであるが、それでも抵抗は非常に強く、時間がかかると思う。故に、手始めとして、法制度の設計は団体の透明性、特に金銭の授受や使途、金の流れについて書類の交付を要求するなどして透明性を確保し、メンバー、元メンバーや公的機関に判断材料を与える方向で進めるべきだと思う。その方が抵抗はしにくいし、裁判においての立証も容易になる。

(4ー3)児童虐待防止法を改正して、親の信仰などによる子供に対する人権侵害をスピリチュアル・アビュースとして児童相談所が介入出来るようにすべきである。

(4-4)宗教=免税ではなく、宗教法人格とは別途、外形的に公益性を審査して免税の付与の判断を出来る仕組みを作るべきである。

(4ー5)正体を隠して勧誘することは違法ということは是非獲得したい。

以上



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