宗教法人法上の解散命令請求の審理に際し、刑事事件の判決の確定は不要。

オウム真理教に対する宗教法人法上の解散命令は、東京地方裁判所において1995年10月30日に発令されています。これは上九一色村におけるサリンの製造による殺人予備行為を理由とするものですが、殺人予備罪でオウム真理教の信徒が起訴され初公判が開かれたのは、同年10月20日、宗教法人法上の解散命令が発令される10日前です。検察官と東京都が東京地方裁判所に解散命令の請求をしたのは、初公判が始まる前の1995年6月30日です。

東京地方裁判所の決定は「本件は、宗教法人法の解釈、適用として、相手方宗教法人に解散を命じるべきか否かを判断するものであって、個人の刑事責任を追及する刑事訴訟とは、目的も違えば、証拠法則等の手続も異なるのであるから、相手方主張のように刑事事件の確定を待って本件解散命令申立の当否を判断すべきであるとはいえない。」と述べており、刑事手続きにおける無罪推定原則と宗教法人法上の解散命令は別の問題であることを明らかにしています。

オウム真理教は当然のように東京高等裁判所に抗告をしますが、1995年12月19日の東京高裁決定はこの論点について触れてはいますが、淡々と事実認定をしていますので、刑事事件の確定が不要なことは当然の前提にされているようです。

1996年1月30日の最高裁決定も刑事事件の判決が出ていない時点で「原審が確定したところによれば、抗告人の代表役員であった松本智津夫及びその指示を受けた抗告人の多数の幹部は、大量殺人を目的として毒ガスであるサリンを大量に生成することを計画した上、多数の信者を動員し、抗告人の物的施設を利用し、抗告人の資金を投入して、計画的、組織的にサリンを生成したというのであるから、抗告人が、法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められ、宗教団体の目的を著しく逸脱した行為をしたことが明らかである。」と認定しているので、やはり、刑事事件の確定が不要なことは当然の前提にされているようです。

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