るろうに剣心――龍鳴閃のルネッサンス

るろうに剣心といえば、所謂黄金期が終わったあとのジャンプを支えた看板漫画で、

幕末に数多の暗殺をこなした神速剣の使い手が明治の世で斬れぬ刀を片手に罪を清算しようとするお話。

比較的小規模な事件を解決して行く序盤、

国盗りを企む志々雄真実らとの激闘を描く中盤、

復讐者の断罪を受け絶望する剣心が過去を乗り越え自らの罪に答えを出す終盤、

と大きく3つのパートに分かれますが、圧倒的に人気なのが実写映画にもなった志々雄と対決する京都編。

最もジャンプらしく作中最も盛り上がった戦いであり、ボスキャラの志々雄真実はジャンプ5大ボスの1人に数えられます。

(他の顔ぶれは、フリーザ・ラオウ・DIO・大魔王バーン)

個人的に、特に良いと思うシーンは剣心と志々雄が戦いを前にして向き合った場面で、各々が互いに対となる思想を掛け合いのように述べるところ。

そのやりとりがアツいだけにとどまらず、単純な力比べではなく思想と思想の戦いの面が強調されて、北斗の拳・キン肉マン・聖闘士星矢・ドラゴンボールと連なる流れに看板漫画として一石を投じた点もかなりの意義があると思います。

その後の人誅編は話が暗いこともあって京都編に比べて不人気な面があり、その要因の1つとして新技の龍鳴閃が肩透かしだったという点が挙げられるでしょう。

大技の九頭龍閃が打ち負け、奥義天翔龍閃すらも捌かれた剣心は、飛天御剣流の得意とする空中戦に持ち込む。

しかしスマブラキャラの如き空中必殺技を披露した縁はまたしても上をいき、剣心は打つ手なし絶体絶命のピンチに追い込まれた。

ここで大見得切って登場したのが新技の龍鳴閃。

しかも技を宣言しての次回へ続く。

これは凄いだろう凄い強いに違いない一体どんな技なのか。読者の心は期待で膨らみます。

ところがどっこいフタを開ければ中身は補助技。しかも刀を納める時に出す超音波で感覚を麻痺させるという、少年漫画的に反則の技でした。

(似た技を使ってたキャラにキルバーンがいる辺りえげつなさがわかる)

確かに強く、ラスボスの弱点をつき、それでいて奥義が最強という設定も崩さないという上手い設定ではあるのですが、

いかんせんカッコイイ必殺技を期待して居た読者としては肩透かしをくらった気分なのですね。

ですがこれ、思想やメッセージや作品としてのまとまりに拘ってきた『るろ剣』としては、これ以上の新技はないんですよ。

僕も最近思いついたんですけど、この龍鳴閃は凄くいい。

奥義が居合抜きだからそれと対になっている、っていうのもあるんですけどね、思い出してくださいよ。

『るろ剣』って贖罪の話なんですよ。

人を沢山殺して、好きな人もその許嫁も殺して、それだから綺麗事吐きながら斬れない刀で傷つきながら世直しやってきたんですよ。

それが最終章で色々あって、傷をえぐられ全てを否定され絶望に叩き落とされ、それでも立ち上がって前を向き、過去を清算する答えを見つけたっていうシーンなわけです。

そこで出てくるのが納刀術たる龍鳴閃。

実際は奥義に繋ぐのでまた抜きはしますが、選挙区を覆す決め手になったのは明らかに納刀術のほうです。

過去の象徴たる復讐者に向けた、最後の奥の手が納刀術って、これ以上の綺麗なラストバトルの締め括りがあるでしょうか!?

数々のカッコイイ必殺技を世に送り出した『るろ剣』だからこそ、作品としての締めも必殺技が担ってくれたのです。

コミュニケーションと普通の人間について知りたい。それはそうと温帯低気圧は海上に逸れました。よかったですね。