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『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』を読んだ感想

 お笑いコンビオードリーの若林正恭さんが書いたエッセイ。リトルトゥース(オードリーのラジオリスナーやファンの呼称)ではないが、お笑い芸人さんは好きなので読んでみた。

 というか、南海キャンディーズの山里亮太さんの『天才はあきらめた』の解説を読んだ時から筆者の存在はずっと気になっていたので、是非読みたかったのだ!

 内容はざっくりこんな感じ。

 新自由主義や資本主義に疲れていた筆者が「今年は夏休みが5日取れそうです」という報告をマネージャーから受け,キューバ旅行を計画する。「アメリカと国交が回復して、今のようなキューバが見られるのも数年だと聞いたから」というのが建前の理由。

 本当の理由は、新自由主義や資本主義というシステム以外の国、そこで暮らす人々をこの目で見ないと気が済まない、からだ。

 そのような理由でキューバを選ぶとは、なかなか変わっている。私はスペイン語を学していたから、キューバに興味を持っていたが、そうでもしなければ、単なる「南米にある国」印象だっただろうから。

 東京からトロントを経由してキューバに行こうとしていた。トロントまでの12時間の間に、第155回芥川賞作品の『コンビニ人間』を読んでいて、親近感を覚えた。

 ただ、それを読んだことがきっかけで現代日本のことを考え始めて止まらなくなり、これから社会主義の国キューバに行こうとしているのになんだが不甲斐ないように見えて面白かった。

 キューバ人はおおらかだと聞いていたようだが、マルチネスというキューバ人ガイドは無言であることが多く、「マルチネス、人見知りだわ」と筆者が思うまでのくだりが三段活用っぽくて、お笑い芸人らしい文章だなと思った。

 題名にある「表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬」という章は読み進めてから3分の1あたりにあった。マルチネスの知り合いのドライバーが運転する真っ赤なクラシックカーのタクシーでカバーニャ要塞に向かった。そこで見つけた一匹の野良犬が印象に残ったようだ。 

 炎天下のカバーニャ要塞で死んだように寝そべっている野良犬。通りすがりの観光客に媚びて餌を貰っているのに、薄汚れているが気高い印象。サングラスやファーで自分をごまかしているようなブスの飼い主に、しっかりとリードで繋がれた毛がホワホワな、表参道にいるような犬よりも可愛く見えたようだ。そこに「自由」を見出していた。

 キューバは治安が悪い国だと思っていたが、過度に心配することもなさそうだった。スリには遭わずホテルの荷物も取られることもないから。そして、なんと言っても、人見知りとして有名な若林さんが一人でも楽しく過ごせるのだから。

 他にもキューバで食べたものや見たものが書かれており、本書を読んでキューバに行きたくなったし、もっと芸人さんの本を読んでみたいと思った。

以上、最後までお読みいただきありがとうございました😊

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