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ワクチンと細菌理論に基づく細胞性免疫

感染やワクチンによって「抗体」が産生され、抗体は新型コロナウイルスなど体内に侵入した微生物(抗原)に対して、それぞれに対応したデザインとなる(しかも複数)
そして抗体にはIgMやIgGなど、同じ抗原を認識するにもかかわらず振る舞う舞台がそれぞれ異なる「クラス」が存在することは今回の感染を契機に広く認識されるようになりました。しかし、コロナウイルス(及びいくつかのウイルス、病原体)では、抗体の働きには一筋縄ではいかない問題があることが指摘されています。

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まず、「抗体」のみではコロナウイルスを排除することができません。免疫の司令塔であるT細胞(Tリンパ球)にはいくつかの種類があり、Th2細胞(Tヘルパー2細胞)と呼ばれる細胞が主役を演じるTh2免疫応答は、現代の日本のような清潔な環境で普通の細菌(ウイルスのように細胞に入り込まず、細胞の外で増殖する細菌)が侵入すると生じるとされているのですが、Th2応答では抗体を産生するB細胞(系列)を刺激するサイトカイン(免疫刺激物質、Th2サイトカインと呼ばれます)がもっぱら産生され、抗体が産生されるのですが(液性免疫とも呼ばれます)、病原体を処理する主役であるマクロファージや、時にウイルス感染を起こした自分の細胞(やがん細胞)を殺して全身を守る細胞障害性T細胞(Tc細胞)の活性化に必要なサイトカイン(Th1サイトカインと呼ばれます)が産生されず、結果として微生物の排除は中途半端で終わってしまいます(Th2免疫応答はやっかいなアレルギー性疾患の原因でもあります)。

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従って、ウィルス感染を効果的に治癒させるためには、Th1サイトカイン、Th1細胞、Th1免疫応答(細胞性免疫とも呼ばれます)が重要であると考えられ、COVID-19を対象とした(この数週間でpublishされた)ワクチンに関する論文(doi: 10.1126/science.abc6284  doi: 10.1126/science.abc1932 doi: https://doi.org/10.1101/2020.05.13.093195)では、必ずTh1, Th2サイトカインが測定され、Th1免疫応答が強く起きていることが(しきたりのように)示されています。

※この記事は細菌理論に基づいて構成されています。


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