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オスのアルビノラットにおけるチメロサールの潜在的な生殖毒性効果に関する研究【論文要約/解説/和訳】

A study on the potential reprotoxic effects of
thimerosal in male albino ratsより引用

チメロサールはエチル水銀ベースの化合物であり、何十年もの間ワクチンの防腐剤として使用されています。今回の研究では、ラットの精巣に対するチメロサールの生殖毒性効果を確認することを目的としました。
24匹の成体雄アルビノラットを4つのグループに分類しました(n = 6)。
実験グループを分けたラットは、それぞれさまざまな用量のチメロサール(0.5、10、50 mg / kg)で治療されました。

n=6というのは24匹のラットがN=24であり、
それを4つのグループに分けて対象がn=6であるという意味です。
つまり、6匹に0.5mg/kg、6匹に10mg/kgといった感じですね。

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ラットは、30日間の試験後に断頭され、さまざまなパラメーターが分析されました。チメロサール曝露は、カタラーゼ(CAT)、ペルオキシダーゼ(POD)、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)を含む抗酸化酵素活性の有意な減少をもたらしました。

ラットを断頭した時に酸化酵素に対して有効と言われる酵素が酵素に水銀を摂取したラットには優位な現象が見られた。

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グルタチオンレダクターゼ(GSR)およびチオバルビツール酸反応性物質(TBARS)のレベルの上昇。チメロサールの異なる用量は、血漿テストステロン、黄体形成ホルモン(LH)および卵胞刺激ホルモン(FSH)の濃度を有意に減少させました(p <0.05)。

チオバルビツール酸反応性物質に関しては、どちらかというとチオバルビツール酸を使った検査に反応した他の物質というイメージで油脂や生体組織の過酸化度を示す指標とされ,簡便な検索法として利用されている。マロンジアルデヒドが反応する物質の代表とされる。

マロンジアルデヒドは、主にエノールの形で存在している。
生体内でマロンジアルデヒドは多価不飽和脂肪酸が活性酸素種により非酵素的に酸化され生成すると考えられている。
→つまりは活性酸素を排毒する酵素が減少している為、結果的にチオバルビツール酸に反応するような物質が増えてしまっているということ…

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さらに、毎日の精子生産(DSP)と毎日の精子生産の効率は、チメロサール曝露に続いて大幅に減少しました。さらに、チメロサールは、精母細胞とともに、一次精母細胞、二次精母細胞、精原細胞の数を有意に(p <0.05)減少させました。

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チメロサルは、ライディッヒ細胞の減少、精細管の直径、精巣白膜の高さ、上皮の高さなど、精巣組織に有害な組織病理学的および形態学的変化を誘発しました。一方、チメロサールにより、管状内腔(動脈や腸などの管の内側の空間のことを言う)間質腔の増加が観察されました。

ライディッヒ細胞とは、テストステロンを放出することが可能であり、神経と密接な関係があります。また、テストステロンの効果として
・性腺刺激ホルモンの産生調節
・ 筋肉の発達性欲の亢進
・ 精子形成の増加
・ 男性期の形成の促進 などがあります。
※画像は人間の精巣と犬のライディッヒ細胞ですが、どこの構造にあるものなのかイメージを分かりやすくする為に参照にしてください。

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→結果は、チメロサールが雄のアルビノラットに潜在的な生殖毒性作用を有することを示した。

まとめ、
①カタラーゼ(CAT)、ペルオキシダーゼ(POD)、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)を含む抗酸化酵素活性の有意な減少
②グルタチオンレダクターゼ(GSR)およびチオバルビツール酸反応性物質(TBARS)のレベルの上昇
③血漿テストステロン、黄体形成ホルモン(LH)および卵胞刺激ホルモン(FSH)の濃度を有意に減少させました
④ライディッヒ細胞の減少、精細管の直径、精巣白膜の高さ、上皮の高さなど、精巣組織に有害な組織病理学的および形態学的変化を誘発しました。
⑤管状内腔と間質腔の増加


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