見出し画像

「フォント探偵」は、偽造文書を見破る

第一回目の「core-iine」徒然日記は、「フォント探偵」について語りたいと思います。

フォント探偵とは?

画像2

「Thomas Phinney(トーマス・フィニー)」さんのこと。FontLabのCEOで、活版印刷と印刷の修士号取得。簡単にいえば、フォントにめちゃめちゃ詳しい人です。

フォントはとても奥深い世界であり、それぞれに特性・歴史があります。それを知り尽くしているため、「フォントを識別し、真実を解明していくプロフェッショナル」の領域に達した人です。

あまりにもすごいので、JSTORというオンライン出版が記事で「The Font Detectives(Detective=探偵、刑事)」と命名しました。

フォントってそんなに奥深いの?

どのフォントを選ぶかというのは、デザイナーにとっては重要なことです。デザインの雰囲気を大きく変えることができます。美しいフォントは、1つ何万という価格で販売されていることも珍しくありません。

歴史的側面から考えるのも面白いです。活版印刷という技術は、それまで手書きでしか複製できなかったものが大量に複写できるようになり、情報伝達等で社会的に大きな影響を及ぼしています。中国ではかなり昔から技術はあったものの、漢字数が多く普及しづらかったようですが、英語圏はアルファベット数が限られているため、活版技術と相性がよかったのです。
この時、どんなデザインの文字で活版するかが検討されてきました。これがフォントの起源といえます。

フォントは今も昔も、1文字1文字、フォントデザイナーが手作業で作っています。日本語・特に漢字に至っては何千文字とあるので超大変。フォントは大事な著作物なのです。

こんなフォントがあります

私の独断でチョイスした、著名フォントを少しだけご紹介します。

Helvetica(ヘルベチカ)

画像3

1957年にハース活字鋳造所から発売された、スイスを代表するフォント。スイスはグリッドデザインがいち早く提唱された国ということもあり、直線的でバランスのいい、定番フォントです。汎用性が高く昔から愛されていますが、あまりに使われすぎてつまらない、と言われたりすることも。

TimesNewRoman(タイムズニューローマン)

ダウンロード

イギリスの新聞「The Times」が制作を依頼、新聞印刷を目的とした1932年の活版書体。新聞は紙そのものの品質はあまりよくないため、それでも可読性を高め、力強い印象を与えられるようデザインされました。

貂明朝(てんみんちょう)

画像4

2017年にAdobe社が発表した、ディスプレイフォント。西塚涼子さんとRobert Slimbachさんが共同でデザインされたもので、「伝統的でありながらユーモアのある」イメージです。特徴的な丸みを帯びた形で、本文としても見出しても使いやすい、比較的新しいフォントです。

偽造文書が暴かれる

こういった歴史や細かな違いもしっかりと把握しているフォント探偵。裁判では、ある文書が偽造であることを証明した事例もいくつかあります。

要約すると、

文書Aの発行年は1995年とされているが、そこに使用されていたフォント(Cambria)は2007年に公開されている。
文書Bの発行年は2004年とされているが、そこに使用されていたフォント(Calibri)も2007年に公開されている。
文書Bは、仮に公開前に利用できたとしても、2005年に数字フォントのデザインが変更されているため矛盾が生じる。

とのこと。

他にも、
・トルコのクーデターに関与したとされる証拠の書類
・パキスタンのシャリフ元首相がパナマ文書について潔白を証明するために提出した書類
でも、フォントという側面から偽造であることが判明しました。

フォントマニアすげぇ…

フォント探偵というものを初めて知ったときの、私の素直な感想は、

「マニアってすげえ」

の一言に尽きます。極めるとこんな形で役に立つこともあるんだなぁ。偽造文書、絶対ダメ!

こちら↑が彼のブログです。英語で全然読めないし、そもそも私にはマニアックすぎる内容ですが、興味がある方はぜひチェケラ!

画像5

てことで、偽造が暴かれるきっかけになった「Calibri」と、個人的に超気に入ってる「貂明朝」を、マガジンのロゴタイプに使ってみました。

フォントって

ふぉんとに奥が深いね!

どひゃー!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?