インターネットの言論は「自由からルールへ」の移行ができないと崩壊しかねない
ネットは自由だ!大手メディアも個人もフラットな場だ!2000年代のインターネットはそんな空気に包まれていた。私もこっそり書いていたブログが徐々に広まり、当時日本でも普及を始めたSNSで多様な読者と出会うことができた。いま私が仕事でも私的にもお付き合いしている人の大半は、そこから関係が生まれた。
だが2010年代後半からくすぶり始め、2020年代に顕在化したのがネット空間の荒廃だ。SNSはうかつにものを言うと寄ってたかって叩かれ、得体の知れない詐欺広告が飛び交うようになった。ネットメディアの多くは広告収入を漁る場に堕し、メディアとしての矜持を失ったように見える。
これならネット以前の方がマシだ。そんな後退的なことを言いたくなってしまう。
総務省の有識者会議で偽・誤情報や詐欺広告への対処を議論
この傾向は世界的なもので、諸外国では明確に「規制」の動きが出ている。ブラジルでは8月に最高裁がX利用禁止を決定した。今月になりイーロン・マスクが折れて罰金を払って誤情報アカウントを凍結し、最高裁は停止措置を解除した。
EUでは2022年にデジタルサービス法を施行。プラットフォーム事業者に違法有害情報の削除を義務付け、制裁金も課すとした。
日本でも、2023年11月から有識者会議「デジタル空間における情報流通の健全性確保の在り方に関する検討会」がはじまり、2024年9月にとりまとめを終えた。この検討会については9月24日にMediaBorder会員向けの勉強会を行い、有識者として検討会に参加した京都産業大学の脇浜紀子教授と関西大学の水谷瑛嗣郎准教授に解説してもらった。
勉強会の様子はYouTube限定公開動画で見ることができる。掲示板にそのリンクがある。
解説していただいてよくわかったのが、この検討会から2つの方向でのルールづくりに入ることだった。1つ目は、プラットフォームにモデレーションの義務づけを検討すること。2つ目は、ネット広告のルールづくりだ。
10月に入るとさっそく、総務省は新たな有識者会議を立ち上げた。「デジタル空間における情報流通の諸課題への対処に関する検討会」という名称で、「諸課題への対処」とあるのは何らかの規制を視野に入れている検討会ということだ。
第一回の資料「デジタル空間における情報流通の諸課題について」では前の検討会のまとめとしてこんなページがある。
「1:情報伝送PF事業者による偽・誤情報への対応」「4:広告の質の確保を通じた情報流通の健全性確保」この2項目がボリュームが大きく、先述の2つの方向性と合致している。この1と4を中心に議論を進め、「制度的な対応」に着地すると思われる。
プラットフォームのモデレーションの難しさ
ここに書かれていることは、パッと見るとぜひやるべきことだと思える。だがこれを具現化するのはかなり大変だろう。
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