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日本のコンテンツ産業はジャンプする時!〜韓国と日本を結んできた、黄仙惠氏に聞いてみた

※画像は12月まで務めた日本ビジネスセンター長としての黄氏

3月のある日、ここでも記事に書いた大原通郎氏「ネットフリックスvsディズニー」についてFacebookで投稿した。それに対し、黄仙惠さんがコメントをくれた。

FB投稿

FBコメント

「日本はジャンプが必要な時期」、なるほどと思い詳しいお話をお聞きしたくなった。このあとさっそく黄さんに取材をお願いし、快諾をいただいた。

黄仙惠(ファン・ソンヘ)さんは、2020年12月まで韓国コンテンツ振興院・日本ビジネスセンターのセンター長を務めた方だ。昨年初めにお会いし、私の勉強会でご講演いただくつもりが、コロナ禍で流れてしまいそれっきりになっていた。日本センター長を退職されることはメールいただいていたが、頓挫したご講演をお願いできないかと考えていたところだった。そこへ大いに気になるコメントをもらったので、お話を聞きたくなったのだ。

何しろ、昨年は韓国映画「パラサイト 半地下の家族」が米国アカデミー賞を席巻し、Netflixで「愛の不時着」「梨泰院クラス」などドラマがヒットして韓国コンテンツの世界市場での強さを思い知らされた。気がつくと、日本の映画やドラマが届かない遠い先を走っている。一方、日本のコンテンツ産業はゲームを除くと行き詰まっている。もう韓国に追いつけないのか?海外市場で日本の映画やドラマが伸びていくにはどうしたらいいのか?両方の国のコンテンツ市場をよく知る黄さんなら具体的なヒントをもらえるのではないか。じっくり聞いてみた。

黄さんは1997年に韓国のテレビ局KBSに入り、ドキュメンタリー部門で放送作家とディレクターをしていた。2002年に日本に留学し、一橋大学で放送ジャーナリズムの修士号を取得したのちも日本に留まりソニーネットワークコミュニケーションズに入社。CSチャンネルの編成に8年間携わって韓国やタイ、台湾、中国のコンテンツを日本で放送した。その後、文化政策に興味が湧きもう一度大学で勉強しようと慶應大学の中村伊知哉氏の研究室で学び、博士号を取得したそうだ。

そんなタイミングで、韓国コンテンツ振興院が日本センター長を初めて現地採用するというので応募し採用された。3年間の任期が昨年12月で終わったが、今も日本で仕事をしているそうだ。日本センター長時代は日本の市場を身近に感じられてよかったし、それに基づいてグローバル人材と国際共同事業の立ち上げなど、日本と韓国のコンテンツ業界をつなぐ仕事をしている。

黄さんに「ジャンプが必要」とのコメントが気になったことを伝え、昨年は韓国と日本のコンテンツ産業の格差を思い知らされ、日本はどうすればいいのかアドバイスをとお聞きした。

黄さんがまず言ったのは「テレビに対する概念を変える必要がある」という点だ。日本の発展に大きく寄与した家電の代表であるテレビは、中身のコンテンツの問題とは別に、その機能の捉え方を転換する時。1つはモニターとして、もう1つはプラットフォームとして。モニターとしてはボタンひとつで様々に楽しめる機能性、プラットフォームとしては選択肢がたくさんあることが大事ではないか。

さらに黄さんはコンテンツ産業の課題を、制作者、メディア企業、行政の政策の3つの側面で解析してくれた。以下は、黄さんが言ったことをその3つの軸でまとめたものだ。

制作者は「下請け意識」を脱却すべし

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