科学的根拠の発信が正義とは限らない
専門職の発信を見ていると、科学的根拠とかエビデンスという言葉をよく見る。
病院に勤めていた時や学会でもよく聞いていたので、馴染み深い言葉。
医療行為において治療法を選択する際「確率的な情報」として、安全で効果のある方法を選ぶ指針になるためとても重要だ。
ただ、個人的にはSNS上の発信においてこの言葉を使う時は注意が必要だと思っている。
特に私が苦手だし警鐘を鳴らしたいのは、育児方法における発信。
例えば。
歯並びが悪くならないために、生後6ヶ月までは完全母乳育児が推奨されています!
これは科学的根拠が出ているのです。
という情報だけを見た時、どう思うだろうか。
完母で育てている人はああよかった。と思うかな?
じゃあ完母で育てたいのに母乳が出なくて悩んでる人は?
混合育児の人は?
ミルク育児の人は?
混合やミルクで育てて、今子供の歯並びに並んでいる人は?
いやいやそこまで考えていたら情報発信なんかできないよ。
なんて思うかもしれない。
これは一例だけど、こういう発信をしている人は割と多い。
もちろん全てに配慮するのはなかなか難しい。
ただ、〇〇のためにはAよりもBがいいというのは科学的根拠があります!
みたいな発信をした場合の、Bをどうしても選べない状況にある人を無視してはいけない。
一対一で話していて、Aを選んでいる人に自信を持たせるために言うのはいい。
AかBで悩んでいる人にも。
でも、不特定多数に向けて情報発信をするのであれば、Bを選んだ人、選ばざるを得なかった人に対しての配慮が必要だと思う。
Bを選んだからって絶対に悪い結果になるという根拠は立証されていませんよ。
みたいな注釈をつけるとかね。
先にあげた例の母乳に関していうと、完母を推奨する情報は非常に多い。
完母は産後うつになりにくい、SIDSが発症しにくい、歯並びが悪くなりにくいなどなど…
これに加えて、水戸黄門の印籠のように科学的根拠(エビデンス)という文字。
研究者でもないし、論文を読んだこともない人がこの情報を見たときなにが起こるか。
ミルク育児だと、産後うつになりやすいし、SIDSが起こるし、歯並びが悪くなる。
こう捉えられてしまう可能性が非常に高い。
ミルク育児がそうなってしまうなんていう根拠はどこにも書いてないのに。
だからこそ、科学的根拠やエビデンスって言葉や論文の提示を発信する時は慎重になるべきだと思う。
よかれと思ってしたその発信が多くの人を傷つけているかもしれない。
そして、『論文』や『根拠』に落ち込みそうになった人へ。
そもそも論文っていうのは、自分が主張したいことに対する仮説を立てて、その仮説を立証するための情報をかき集めて書かれるもの。
科学的根拠が立証された!
とされていても、他の研究者が読むとデータの算出方法や見方など色々ツッコミどころがある論文なんてザラにある。
その人が発信したい情報や意見がそれであっただけなので、一旦そこから距離をおくことをおすすめする。
エラソーに言ってはみたけれど、自分の発信に対しても自信があるわけではない。
言葉選びや情報発信には重々気をつけていきたいと思う。
ここまで読んでくだってありがとうございます。
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